都合のいい解釈
NHKや主催者の朝日新聞社とクロスオーナーシップで結ばれた朝日放送やテレビ朝日は、主催者である高野連に対してテレビ中継の放送権料はまったく支払っていないという。
金銭的利益を目的にしていない高校生の大会なのだから、それは当然かもしれない。が、コロナ禍で甲子園大会が中止になったとき、「甲子園名勝負」として江川卓投手や松坂大輔投手など、プロに進んだ選手の出場した過去の試合がNHK BSで再放送されたときには少々複雑な気持ちになった。彼らには肖像権が存在しないのだろうか?
マスメディアと「正常な関係」にある競技
明治時代初期の文明開化で欧米から多くのスポーツが日本に伝播したなかで、最も大きな人気を得た野球(高校野球やプロ野球)が、新聞社やラジオやテレビ(メディア)の力のおかげで、さらに大きな人気を獲得したことは事実である。
その意味では野球が大好きで少年時代毎日のように近所の禅寺の境内で草野球に興じ、大人になってからは甲子園球場や後楽園球場などのネット裏から無料で野球を見ることができるのを大喜びしてスポーツライターになった私のような人間は、日本の野球人気を大きく発展させたマスメディアに大いに感謝すべきだろう。
しかし時代は変わった。いまやマスメディアがスポーツ・イベントを主催したり、スポーツ・チームを所有したりする時代ではなくなったはずだ。それはマスメディアと「正常な関係」を保ちながら発展している日本のサッカー(Jリーグ)を見ればわかる。
東京オリンピックの愚を繰り返すな
JFAはすべての日本のサッカー組織を束ねているのに、マスメディアが強く支配している野球界は、プロ、社会人、高校と組織が分かれ、大学、中学、ボーイズリーグ、リトルリーグ……などに分かれたままで、「日本の野球」としてひとつの組織にまとまれないでいる。
その組織を(サッカー界のように)一本化して、審判員のライセンスをプロもアマも共通するものに(サッカーのようにS級、A級……と)整えたり、監督やコーチのライセンスも同様に整えたり、高校生だけでなく野球と取り組む青少年に対する指導や健康管理なども組織的に一元化して整えたほうが良いとは誰もが思うことであり、考えることだろう。
そして、そのようなメッセージを出すのはジャーナリズムを担うメディアの仕事のはずだが、マスメディアがステイクホルダー(利害関係者)として自らの利益を……と繰り返すのは、もうやめる。
しかしジャーナリズムを担うべきメディアがジャーナリズム以外の役割を担うと最悪の結果を招くことは、1年遅れで開催された東京オリンピックのスポンサーに大新聞社が名前を連ねたことで証明されたのではなかったか?