2018年からはビデオ通話デバイス「Portal」を売り出したが、同紙は「ユーザーにとって魅力的でないことが明らかになった後も、長い間この製品にこだわってきた」と厳しい評価を下している。サンフランシスコのニュースサイトであるSFゲートは、Portalがすでに2022年に製造中止になったと指摘している。

社内で囁かれる「マーク・ザッカーバーグのご機嫌取り」の隠語

過疎化の悪循環に加え、製品の扱いにくさもユーザー離れの原因となっているようだ。皮肉にも、ザッカーバーグ氏主催の社内ミーティングがそれを証明する形となった。ニューヨーク・タイムズ紙によると氏は昨年、バーチャルの会議室を提供する「Horizon Workrooms」内での社内ミーティングを呼びかけた。

だが、多くの従業員はVRヘッドセットを持っておらず、設定にも手こずったと同紙は伝えている。従業員らは上司に知られる前にヘッドセットを入手し、ユーザー登録を済ませるなど、あたかも以前からのユーザーであるように振る舞うのに苦心したという。

ある従業員は同紙に対し、「Horizon Workrooms」上での別のミーティングもうまくいかなかったと明かしている。記事によると「技術的な不具合で会議は中断され、結局のところこのチームはZoomを使うことになった」という。

メタバースの有用性について、社内からも疑問が噴出している。情報筋は同紙に対し、メタバースのプロジェクトが社内の一部では「MMK」と呼ばれていると明かした。「Make Mark Happy(マーク・ザッカーバーグのご機嫌取り)」を意味する隠語なのだという。

TikTokへの流出が止まらない

過去であればMeta(当時のFacebook社)は、時代の波を見据えた舵取りを行ってきた。デスクトップ版が主流だった主力サービス・Facebookは、2000年代前半にモバイル対応に成功。Facebook一本槍からの脱却を企図し、2012年にInstagramの買収を通じて若年層を取り込んだところまでは先見の明があった。

しかし近年、VR事業を別にしても、同社を取り巻くビジネス環境は一段と過酷になっている。ネット上にコンテンツがあふれるようになった現在、ユーザーはより短時間で消費できる短編動画を求めており、TikTokへの流出は深刻な課題だ。

TikTokアプリのアイコンが表示されたスマホ
写真=iStock.com/5./15 WEST
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TikTokにも弱みはあり、中国企業のByteDanceによる運営という立場上、プライバシー問題には懸念が世界から寄せられている。だが、この点でMeta社は決してリードを保っているとは言いがたい。

もともとFacebookユーザーのプライバシーを収益源としていた同社には、ユーザー保護の視点が欠如しているとの批判が絶えなかった。AppleがiOS上での個人情報の追跡を困難にしてからは、広告収入の明らかな減少に見舞われている。