フランス料理を美しく食べるためのマナーは何か。フードプロデューサーの小倉朋子さんは「ナプキンの扱い方はお店の人へのメッセージになる。『全員が席につき、料理のオーダーを終えたタイミング』で広げるべきであり、中座するときは折りたたんではいけない」という――。

※本稿は、小倉朋子『世界のビジネスエリートが身につけている教養としてのテーブルマナー』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

エレガントなレストランで白いテーブルクロスの上に置かれたナイフ、フォーク、プレート、折り畳まれたナプキン
写真=iStock.com/thomaslusth
※写真はイメージです

フランス料理で「女性を話の輪の中におく」はマナー

食事の席では会話を楽しむもの。特にフランス料理では大切にされています。いくらカトラリーを正しく扱って美しく食べていても、会話を楽しもうという態度がなかったら、食のマナーの半分も守れていないことになるでしょう。

料理はコミュニケーションの円滑剤であり、主人公は、あくまでも人です。まわりの人たちに絶えず目を配り、会話を楽しんでこそ、教養あふれる大人の振る舞いといえるのです。

女性を立てる「レディファースト」の起源は騎士道ですが、食事の席の主人公は人であるというところにも通じています。

たとえば女性をテーブルの隅に座らせないというのは、フランス料理の一定層の人々の席での常識です。人に囲まれ、常に話の輪の中にいられるよう、女性は必ず両側に人がいる席にエスコートしましょう。

女性を悲しませない席次

フランスでは、会食の際にコミュニケーションと同等に大事にされるのが席次です。

正式な場、カジュアルな場、接待要素のない場など、シチュエーションは異なれど、いついかなる場でももっとも気にかけるべきは「女性を寂しくさせないこと」と「高齢の方を寒くさせないこと」。

フランスの社交の場では、配偶者同伴の会食が基本となっています。オーソドックスな例を1つご紹介します。図表1をご覧ください。ここでは、便宜的にホスト(主人)と招客は男性、その配偶者が女性の場合を例とします。

まず入口から遠い席が上座、入口に近い席が下座となります。この場合、いろいろな決め方があるにせよ、たとえば入口から遠いテーブルの真ん中にホスト(男性)、そしてその向かい側にホスト夫人(女性)と、まず中心を決めます。

その後は、ホスト夫妻の右側に主賓夫妻→②番目夫妻→③番目夫妻→④番目夫妻……と男女が交互になるよう席を決めていきます。

客が男女同数の場合、図のようにテーブルの一方の端が女性になってしまいます。その場合、「女性を寂しくさせない」ために、男性客と席を入れ替えて、女性同士が隣合わせになる席をつくることもあります。