岸田首相と尹大統領の貴重な外交成果に

岸田首相は訪韓前、自民党保守派から「歴史問題で韓国に一歩たりとも譲歩するな」という電話攻勢を受けていた。そこで韓国側と一言一句調整したうえで言葉にしたのが「心が痛む思い」という表現であった。

韓国の国内には、「それでも不十分」との声が根強い。しかし、4月26日の米韓首脳会談に続き、今回の日韓首脳会談と、日米韓の強固な関係を構築できたことは、岸田首相と尹大統領の外交成果と言っていい。

5月19~21日の間、岸田首相の地元・広島で行われるG7サミットでは、日米韓3カ国がそろっての首脳会談も予定されるが、岸田首相は確かな手応えを感じながら会談に臨むことになる。

広島平和記念公園に設置されたG7サミットの花のモニュメント
筆者撮影
広島平和記念公園に設置されたG7サミットの花のモニュメント

フィリピンとアメリカも「軍事連携」で結束

5月1日の米比首脳会談でも進展があった。

米比首脳会談の要旨
バイデン大統領が「アメリカは南シナ海を含むフィリピンの防衛について、鉄壁の関与を続けていく」と、中国を念頭にアメリカの防衛義務を約束した。

フィリピンのマルコス大統領も、国内4カ所の軍事基地のアメリカ軍の使用を認めると表明。両首脳は、陸海空のほか宇宙やサイバー空間での軍同士の情報共有や作戦計画能力を強化することで一致した。

フィリピンは地政学上、南シナ海の戦略的要衝にある。その領有権をめぐって中国と対立を繰り返してきた国だ。日韓の急速な関係改善に加え、米比両国の間に軍事同盟に近い関係が出来上がったことは、東アジアで中国を取り囲むように、NATOにも似た安全保障同盟が構築されつつあることを意味している。この点は日本から見ても歓迎すべきことだ。

ただ、「対中国」外交での手応えとは裏腹に、驚愕したであろう点にも触れておかなければならない。それは、「グローバルサウス」と呼ばれる新興国の取り込み、特にアフリカにおける日本の弱さと中国の圧倒的な強さである。