ガーナでも約700億円の「バラマキ外交」

ガーナでも日本は太刀打ちできない。岸田首相はアクフォアド大統領と会談し、「ガーナとの間で幅広い分野の協力を強化していく」と述べ、今後3年間で約5億ドル(約680億円)を支援すると表明した。しかし、中国のガーナとの貿易額は100億ドル近く。日本とガーナの8億ドル弱と比べれば12倍である。

3番目の訪問国ケニアでは、岸田首相が、日本が提唱する「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け協力を呼びかけた。ケニアがインド洋に面しているためだ。

そのケニアでも2017年、モンバサ―ナイロビ間で主に中国輸出入銀行が融資し、中国交通建設が工事を請け負った鉄道が完成し、2022年には、同じく中国交通建設によってモンバサ港に世界規模の石油・天然ガス埠頭ふとうが完成し稼働している。

最後の訪問国、モザンビークは資源が焦点となった。岸田首相はフィリペ・ニュシ大統領と会談し、モザンビークを「有数の資源国」と評した上で、液化天然ガス開発事業について財政支援を続けると約束した。

ただ、ここでも中国は、中国医薬集団(シノファーム)製の新型コロナウイルスワクチンの供与、モザンビークからの輸入品の無関税化といった便宜を図っている。

「アフリカ植民地化」を進める中国との歴然たる差

このように4カ国だけを見ても、日本は周回遅れという気がしてならないのである。

もっとも、アフリカ諸国では、ガーナやケニアのように、中国が手がけるプロジェクトや融資によって過剰な負債が生じてしまう「債務の罠」の問題が深刻化している。

アフリカ大陸の地図の上に人民元
写真=iStock.com/Oleg Elkov
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たとえば、ケニアでの鉄道建設は「通常より3倍も高い」と批判されており、他の国でも、中国マネーに依存させ、事実上の植民地化を進めているとの批判が絶えない。

日本はそこに付け入る隙があるのだが、中国は、先に述べた秦剛外相もそうだが、この30年余り、年始に必ず外相がアフリカを訪問し関係維持を図っている。

岸田首相は、G7サミット前に駆け足で回った4カ国で、「アフリカ諸国の顔を日本に向けさせることは容易ではない」と、中国との間についてしまった大差を痛感したに相違ない。