エジプトの地下鉄整備に1000億円借款も…

岸田首相が4月29日から5月5日にかけて歴訪したエジプト、ガーナ、ケニア、モザンビークのアフリカ4カ国。その狙いは「日本がG7とグローバルサウスとの橋渡し役」になることであり、言い換えるなら、「中国包囲網」の中に取り込むというものだった。

その観点から言えば、今回の歴訪は「行かないよりマシ」ではあるが、野球で例えるなら「10点取られたあとに、どうにか1点返す」ようなものだったと言えるだろう。

エジプトは人口1億900万人を抱える中東・北アフリカの大国で、スエズ運河を有する交通の要所でもある。

岸田首相はシシ大統領との会談で2国間関係の強化を確認。日本とエジプトの経済団体が主催する「ビジネスフォーラム」では、日本が首都カイロと郊外を結ぶ地下鉄整備に1000億円の円借款を供与すると発表された。岸田首相はこの席で、次のようなスピーチを行った。

「エジプトで活動する日本企業は約50社、貿易額としては約13億ドルに上り、日本からの直接投資もこの1年で2倍に増加しました」

カイロ近郊には「第2の上海」が建設されている

筆者もかつて首都カイロに数カ月滞在したことがあるが、確かに日本とエジプトとの関係は良好そのものだ。

しかし、中国の昨年のエジプトとの貿易額は180億ドルを超える。日本の15倍近い。エジプトにとって最大の貿易相手国は中国で、その中国は、今年1月には秦剛外相をエジプトに派遣するなど、近頃では、習近平指導部による巨大経済圏構想「一帯一路」に引き込もうとする狙いが透けて見える。

特筆すべきは新首都構想だ。カイロ近郊の砂漠地帯に新たな首都を建設する途方もないプロジェクトを担っているのが中国で、そのランドマークとなるアフリカ一の超高層ビル「アイコニックタワー(Iconic Tower)」(393メートル)の今年中の完成に向け工事が進められている。

650万人が暮らすことになる新首都は、6000台を超える監視カメラで守られ、Wi-fiのアクセスポイントは街灯の柱というスマートシティーだ。これだけでも砂漠の中に「第2の上海」が出現するようなものだ。岸田首相も驚愕の現実を目の当たりにしたことだろう。