長谷川氏は「ケアマネジャーと主治医選びで運命が決まる」と断じる。

「まず、市町村の窓口で介護保険の申請と地域のケアマネ探しを行うのが基本中の基本。社会福祉協議会(社協)のケアマネがいいともいわれますが、単純にそうとは言い難い。一定の水準は保証されていますが、半分公務員のようなもの。土・日に連絡がつかない場合も多い。かといって、民間のケアマネは情熱ある人も評判の悪い人もいて玉石混交。それに、ほかにいい選択肢があっても、自社で患者を抱え込む傾向がある。一長一短です」

主治医については、多くの人は大病院の医師に頼みたがるが、肩書や名前で選ぶのは危険だという。

「彼らは忙しいうえに介護のことをよく知らないから何もしてくれません。専門を問わず、在宅医療をやっている医師と、そこに絡むケアマネを選ぶといい。きちんとしたホームページをつくっているか否かが一定の目安になると思います」

ただ、成年後見制度については、「医師の立場からいえば使うべきですが、本当に困ることがなければ、むしろ使わないほうがいい」という。

「成年後見人は、親の“財産管理人”ではなく“保証人”。たとえば、月20万円の生活費を1回だけ30万円とし、差額10万円を貰おうとしても、理由を説明できないと裁判所はNG。成年後見を使う人の多くはお金持ちですが、お金も借りられなくなるし、子供への贈与ができなくなる。むしろ、元気なうちに遺言をつくっておくほうが大切だと考えています。親がどういう死に方を望んでいるかによって、いろんな事柄が変わります。肝心なのは、元気なうちに親とどれだけコミュニケーションを取れるか、では」

親の望みは? その意に沿う方策は? そのための備えは?……「知らない」がゆえの悲劇を避けるには、早いうちから、正しいことを知るための真剣な努力を続けることだろう。

(山口典利、松田健一=撮影)
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