「世界最大の民主主義国インドへようこそ」という看板
この点でインドは、政治では独立以来、一貫して民主主義を守ってきた国だ。同じ英領インドから誕生したパキスタンは、これまで何度もクーデターを経験し、長期にわたって軍事政権がつづいた。そのパキスタンからインドに陸路で入ると、「世界最大の民主主義国インドへようこそ」という看板が出迎えてくれる。自分たちは中国やパキスタンとは違い、民主主義国なのだというのは、インド人の誇りのようだ。
ただ、経済では、この国は長年にわたって閉鎖的で、社会主義的混合経済といわれる体制に固執してきたのも事実である。しかしそれも、1991年に大規模な自由化が行われ、規制緩和や外資の導入が図られた。その後も、経済自由化の流れは変わらなかった。とくに2014年に発足したモディ政権下では、製造業、卸売業、保険業、国防産業など、多くの分野で外資規制の撤廃や緩和が進んだ。いまや、政治だけでなく、経済体制においても西側にとって好ましい国になってきたのである。
反日感情もインドには存在しない
アジアの一部で依然みられるような反日感情も、インドには存在しない。戦時中、日本軍はインド北東部のインパールへの侵攻を試みたものの、大失敗に終わった。結局、日本がインドを支配することはなかった。独立の父、マハトマ・ガンディーはたしかに、日本の中国支配や、ドイツ、イタリアとの三国同盟に疑問を投げかけた。ただそのガンディーも、ロシアに抗し、独立運動にとっての直接の敵であるイギリスと戦う、日本への期待感をのぞかせることもあった。さらにチャンドラ・ボースのように、日本軍と手を携えて独立をめざすインド国民軍の動きもあった。先の大戦をめぐっては、わが国は同盟国アメリカとのあいだでさえ、原爆投下や東京裁判などをめぐって、歴史認識を共有できているとはいいがたい。
そう考えると、インドほど、日本にとって価値観の一致する国はないようにみえる。