保守分裂した徳島、奈良は意外な大差に

残りの奈良、徳島、大分は、告示前は接戦を予想されたが、意外な大差となった。奈良の荒井正吾知事は4選、徳島の飯泉嘉門知事は5選されており、前回の知事選挙の時に、対立候補になかなか善戦されたりして、これが最後ではないかと受け取る人が多かった。

飯泉は総務官僚らしく手堅かったものの経済政策などで物足りないといわれたし、荒井は国際的な観光都市として奈良を進化させるのに大功績があった一方で、政策でも人的関係でも大衆や実力者にこびるのが嫌いで、反発もあった。

だが、後任の知事候補を見つけるのに現職が消極的だったうえ、徳島にはまとめ役となるリーダーがおらず、奈良では高市早苗県連会長が強引すぎた。それどころか、徳島はまとめ役になるべき、後藤田正純衆議院議員と三木亨参議院議員が自ら立候補して混乱に輪をかけ、後藤田氏が初当選を果たした。

奈良では、維新が知名度もある山下真元生駒市長を擁立したのに対して、荒井知事で勝てるか不安があり、総務官僚で岐阜県副知事などを務めた平木省が出馬した。

平木はもともと高市総務相の秘書官でもあり、高市大臣が立候補に関与していないといっても説得力がなく、荒井知事が参議院議員時代のつながりの深い森山裕選挙対策委員長や二階俊博元幹事長の支持を得ていただけに、中央突破は難しかった。保守分裂の結果、大阪府以外で初めて維新の公認知事が誕生することとなった。

若くて見た目がよければ、政策は問われない

結局、北海道・大阪・奈良・徳島で勝ったのは①若い、②端正なルックス、③姿勢だけでも改革指向という面々で、それほどの政策論争があったわけでない。直接選挙でも米国の選挙では、予備選挙などを通じて、候補者をしっかり品定めするプロセスがあるが、日本ではそういうものもないから、断片的な印象での勝負になるのだ。

一方、大分では、「一村一品」で知られる平松守彦、全国の知事の中で唯一の事務次官経験者である広瀬貞夫という大物のあと、大分市長の佐藤樹一郎が後継として出馬した。市長としてコロナ対策などで優れた手腕を発揮して評価も高かったが、3人連続経済産業官僚というのを不安に思う人もいた。

対立候補として立候補したのが、野党系の参議院議員の安達澄で、まさに上記の三つの条件を備えた候補だった。しかし、4年前に獲得した議席を任期途中で投げだしたので野党系はまとまらず、政策らしきものもなかったので、佐藤との一騎打ちで57.3%対42.7%と差をつけられた。

それでも安達がそこそこの票を集めたのは、安達の辞職に伴う参議院議員補選を同時にするように安達が辞職時期を選んだためで、野党系が自民・公明との共闘を嫌ったが故だが、さすがに限界があった。