イソフラボンには女性ホルモン様活性がある

植物性食品中のフラボノイド類の大半は配糖体として存在し、たいていは摂取したのちに消化管で糖が切断され、アグリコンの形で吸収されます。アグリコンは脂溶性であるため小腸上皮細胞膜を透過しやすくなり、吸収効率が上がります。一方、配糖体の糖がグルコースである場合、グルコース輸送体によって配糖体も吸収されるという研究結果があります。

フラボノイド類の中でも、大豆に豊富に含まれるイソフラボンには大きな特徴があります。大豆中には含有量の多い順にゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインの3種類のイソフラボンが含まれ、いずれのアグリコンもグルコースが結合した配糖体として存在しています。

また、女性ホルモン様活性が強い順に並べるとゲニステイン、ダイゼイン、グリシテインで、大豆中の存在比も同じ順で10対5~6対1となります。図に示しましたように、イソフラボンの構造は体内で女性ホルモンとして働くβエストラジオールと相似しています(図表4)。

【図表4】大豆イソフラボン
大豆イソフラボン(出所=『健康寿命をのばす食べ物の科学』)p.149

私たちの研究室でも、これらイソフラボンとβエストラジオールのホルモン活性(正確にはエストロゲン受容体への結合活性)の比較をしました。当然、βエストラジオールが最も強い活性を示しましたが、ゲニステインはβエストラジオールの濃度の1000倍程度の濃度にすると、ほぼ同程度の活性を示しました。

血管への保護的機能も期待できる

血中のβエストラジオール濃度は生理条件により異なりますが、非妊娠時の女性で50~500pg/mL程度という報告があります。一方、大豆を多く摂取する人の血中のゲニステイン濃度は30~300ng/mLという報告があり、そうすると血液中にβエストラジオールの1000倍程度のゲニステインが含まれていることになります。

つまり、食品由来のイソフラボンが体内で一定の機能を発揮する機会は十分にあり得るということです。

女性ホルモンであるβエストラジオールの生体内での働きとしては血管への作用、骨代謝における機能の二つが挙げられます。βエストラジオールには心血管系に対する種々の保護的作用(血管弛緩しかん作用・脂質代謝改善作用・抗酸化作用など)があり、男性と比べ、閉経前の女性に動脈硬化による虚血性心血管疾患が少ないのは、βエストラジオールの抗動脈硬化作用によるものと考えられています。閉経後にはβエストラジオール分泌が著しく低下するためその保護作用を失い、女性でも虚血性心血管疾患が増えてきます。