骨粗しょう症の主な原因は女性ホルモンの低下
骨粗しょう症患者の80%以上は女性で、その主な原因は閉経後の女性ホルモン低下です。
骨密度は一定容積の骨に含まれるカルシウム・リン・マグネシウムなどのミネラル量で骨の強度を表します。女性の場合、骨密度は18歳ぐらいをピークとして40歳代半ばまでほぼ一定値を維持しますが、50歳前後から低下していきます。加齢による低下は女性ホルモンの分泌低下に加えて腸管でのカルシウム吸収の低下、カルシウム吸収を助けるビタミンDの合成能の減少などが挙げられます。
体内のカルシウムの99%は骨と歯に貯蔵されており、骨から溶け出たカルシウムが血液を介して体内の各所へ輸送され、筋肉の収縮や神経伝達などといった重要な働きに関わります。したがって、血液中のカルシウム濃度は10mg/dL程度で一定値を維持しています。
骨は壊す働きである「骨吸収」と骨を作る「骨形成」をバランスよく持ち合わせており、成長期には骨形成が骨吸収を上回ることにより骨格が大きくなっていきますが、骨粗しょう症では骨吸収が骨形成を著しく上回ります。骨吸収は骨にある破骨細胞、骨形成は骨芽細胞により行われ、女性ホルモンであるβエストラジオールは破骨細胞内のエストロゲン受容体に結合し、破骨細胞の働きを抑制します。
大豆を食べれば骨粗しょう症の予防が期待できる
イソフラボンの場合、βエストラジオールに比較すると弱いものの、エストロゲン受容体との結合能を持ちます。
閉経前の女性の血液中には十分量のβエストラジオールがあるため、大豆由来のイソフラボンはそれほど効果を発揮しませんが、閉経後にβエストラジオール濃度が低下すると、イソフラボンの効果が期待できます。
日本人の食生活では乳製品の摂取が少なく、特にカルシウムは要求量を満たしていない栄養素の一つです。そのため欧米人女性と比べて日本人女性の骨密度は低く、骨が脆いです。骨粗しょう症になると足の付け根部分にあたる大腿骨頸部骨折が起きやすくなり、これは寝たきりの原因となりますが、日本人の骨折率は欧米人より低いことが明らかになっています。
これは「ジャパニーズ・パラドクス」と呼ばれており、その理由として畳に正座して座る、和式便所にかがむなど足腰を鍛える機会が多いということが挙げられていますが、生活様式が欧米化している現在ではやや的外れな感じがします。
日本人女性の場合、低体重で骨に負担がかかりにくいということもありますが、それにもまして重要なのが大豆摂取によるイソフラボンの効果です。閉経後、女性ホルモン分泌が激減したときにイソフラボンが女性ホルモン様活性を発揮し、破骨細胞における骨吸収を抑制していることが考えられます。
前立腺がんの予防に役立つとみられている
また、日本人男性は前立腺がんの発症率が比較的低いといわれていましたが近年は増加傾向にあり、2018(平成30)年の患者数は約9万2000人で、男性が発症するがんの第1位となっています。前立腺がんは高齢の男性が発症しやすく、日本人の高齢化と食生活の欧米化(動物性脂肪の摂取過剰との因果関係が指摘されています)がその原因といわれています。
男性でも加齢とともに女性ホルモンが減少し、男性ホルモンの比率が上昇することが原因とされていますが、女性の骨粗しょう症の場合と同様にイソフラボンの摂取が予防に役立つと考えられています。