タンパク質量はほかの食材と比べて非常に高い

牛乳のタンパク質含有量は33%、卵は12.3%、牛肉で12.9%程度です。乾燥大豆を直接口にすることはなく、加工されたものを摂取すれば当然タンパク質含有量は低下しますが、納豆で16.5%程度という数値からも大豆製品の優秀性がわかります。

健康な食生活を送るうえで、食材に含まれるタンパク質量は重要な要素となります。たとえば白米の栄養素の大半は糖質で、タンパク質量を1とすると14.8倍の量を含んでいます。血糖値が高めの人は白米で空腹感を満たすのではなく、大豆製品をメニューに取り入れて高糖質にならない工夫をすることも必要です。

ここまでは量的な観点からタンパク質含有量を見てきましたが、脂質の飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸のように、タンパク質の質的な違いについても目を向ける必要があります。タンパク質は20種類のアミノ酸が連なった形の高分子化合物で、このうち9種類は「必須アミノ酸」として食品から摂取する必要があります。

食品由来のタンパク質は消化管で消化された後、アミノ酸もしくは2~3個のアミノ酸が連なるペプチドの形で体内へと吸収され、最終的には個々のアミノ酸としてそれぞれ代謝されていきます。これらアミノ酸を原料としてタンパク質が合成されていきます。

9種類のアミノ酸は食品から摂取しなければいけない

20種類のアミノ酸は類似の構造を持っているため、代謝されて互いに形を変えることもできます。11種類のアミノ酸は他のアミノ酸から形を変え、あるいは脂質・糖質を代謝して供給することができます。

しかし残りの9種類のアミノ酸(トリプトファン、リジン、ヒスチジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、イソロイシン、ロイシン、バリン)はヒトの体内で調達できないため(ものによっては必要量の調達が困難)、食品から摂取する必要があります。この9種類の必須アミノ酸をまんべんなく十分量含むタンパク質は、アミノ酸スコアが高いタンパク質となります。

動物性食品に含まれるタンパク質は概してアミノ酸スコアが高くなりますが、植物性食品に含まれるタンパク質では低くなります。この考えの基礎となる概念はドイツの化学者ユストゥス・フォン・リービッヒが提唱した「最小律」によります。リービッヒは、植物の生長速度や収量は必要とされる栄養素のうち、与えられた量が最も少ないものにのみ影響されるとするという説を提唱しました。

また、桶から水がこぼれ出る様子を図示してこの概念をわかりやすくしたものが「ドベネックの桶」です(図表2)。これは必須アミノ酸が一つでも欠けていると、その栄養的な価値は最も少ないアミノ酸によって決定することを示しています。

【図表2】タンパク質アミノ酸スコアとは
タンパク質アミノ酸スコアとは(出所=『健康寿命をのばす食べ物の科学』)p.145