「公平性」を課されているのは民放も同じ

(3)の「公平性」は、一応もっともに思える。しかし、注意すべきは、これは公共放送だけでなく、電波を使う民放にも課されているということだ。放送法第4条は電波を使うすべての事業者に対して次の義務を課している。

一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

つまり、(3)の「公平性」はNHKだけでなく、すべての放送業者が担保しなければならないものなのだ。

NHKが勝手に「公共放送」を名乗っているだけ

ここで、なぜこれらの原則を民放も守らなければならないのかについて述べておこう。というのも、放送業者でさえ、これをよく理解していないと思われるからだ。

よく「公共の電波」という言葉を耳にする。その意味は、電波はみんなのものだということだ。電波は誰のものでもないので、誰でも使っていいのだが、そうすると混信を起してしまい使えなくなる。

したがって、限られた数の事業者に免許を与えて使わせるかわり、事業者は電波の届く範囲の地域住民の公共の利益になる放送をしなければならない。そして地域住民は、そのような放送を受信する権利があり、自由がある(よくNHKにスクランブル放送をやれというひとがいるが、受信の権利を侵害することになる)。

テレビをかばって守る手元
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そして、受信の権利は、知る権利とつながっている。地域住民は前述4つの原則をクリアした放送サービスを受ける権利がある。

このように見ると、NHKが公共放送の要件だとするものは、なんの根拠もなく、NHKが勝手にいっているだけだということがわかる。

では、ひるがえって、世界の公共放送はどのような公共性をもっているのだろうか。スイスがわかりやすいので、例にとろう。