そもそも「公共放送」とは何なのか

裁判所は何といっているだろうか。2017年12月6日に最高裁判所大法廷で下された判決は「受信契約を義務づける放送法の規定は、憲法に違反しない」という判断を示した。だから受信料を払えということだ。

判決文は非常に長く、いろいろな論点が盛り込まれているが、要点をまとめると次の二つになる。

1.NHKは民間放送とは違って営利を目的としない公共的性格を持っており、広告が禁じられているので受信料を徴収することができる。

2.NHKだけが公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように放送を行うことを目的としている。

つまり、(1)広告を流さない(2)あまねく広く受信できるよう放送するので、「みんなで支えるべき公共放送であり」ゆえに受信義務を法律で課し、受信料を徴収してもいいということだ。

これにNHKがしばしば強調する(3)公平性を加えてもいいだろう。NHKはまるでこれが自明のことであるかのようにいう。そしてプロパガンダのように繰り返す。その結果これが公共放送の要件だと思っている人もいる。

果たしてそうだろうか。

最高裁判決は法的根拠を挙げていない

まず、(1)の「広告を流さない」だが、世界では広告を流す公共放送は珍しくない。イタリア、フランス、オーストラリア、韓国がそうである。

中国の中央電視台ですら広告を入れている。中国人に聞くと、これによって放送にかかる経費を賄い、国民に負担を求めないのだからいいことだそうだ。

また、(2)の「あまねく広く放送する」が、公共放送の要件だとしている国は、私の知る限りない。公共放送でなくとも、あまねく広く放送したほうがいいに決まっている。逆に、なぜこれが公共放送の要件として挙げられるのか不思議だ。

つまり、世界から見て、日本の最高裁判決は、法によって受信契約義務を課し、それに基づいてほぼ強制的に受信料を徴収できる根拠を挙げていないのだ。