脳の血流を増やす運動

食べ物だけでなく、運動によっても脳の血流を増やすことができる。

あなたが鍛えられるエネルギーの供給システムは、主に2つある。有酸素と無酸素だ。大まかにいうと、有酸素運動は長距離のサイクリングやハイキングなどで、無酸素運動はウエイトリフティングや短距離走などだ。有酸素運動は、酸素を使って脂肪をエネルギーに変え、無酸素運動は糖をエネルギーに変えると考えよう。

しまなみ海堂でサイクリングを楽しむ日本人女性
写真=iStock.com/west
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有酸素運動のトレーニングは心拍数が上がり、長時間続けることができる。身体は1日のほぼすべての時間、酸素呼吸によって機能している。有酸素「運動」は、その代謝を盛んに働かせている状態だが、あくまでも同じ代謝の状況下にある。

あらゆる形式の運動は、体内の制御センターに酸素と栄養をどんどん送り込んで脳の血流を増やす。そのなかでも有酸素運動は、脳由来神経栄養因子(BDNF)を増やす方法として知られる。

時計の針を巻き戻す運動の効果

2011年に発表された独創的な研究では、被験者は認知機能の正常な120人の成人で、その半数が1年にわたって週に3回、有酸素運動を行った。そしてMRIで脳を調べたところ、研究を開始したときより海馬が2パーセント大きくなっていた。

マックス・ルガヴェア、ポール・グレワル『脳が強くなる食事 GENIUS FOODS』(かんき出版)
マックス・ルガヴェア、ポール・グレワル『脳が強くなる食事 GENIUS FOODS』(かんき出版)

なあんだ、それだけか、とあなたが笑う前にお知らせしよう。海馬は通常、40歳を過ぎる頃から年におよそ1~2パーセントずつ小さくなっていく。そして実際に、対照群の被験者たちにこれが起きていた。彼らの脳をスキャンした結果、脳の体積が同じ割合で減っていたのだ。この研究チームの論文によると、有酸素運動によって記憶形成の中枢である海馬の時計の針が、実質的に1〜2年戻っていたという。現時点で、この世に、これほどの力を発揮する薬はほかにない。

ここまで言っても、まだあなたが驚かないなら、こんな話はどうだろうか。海馬が大きくなっていた被験者たちは、慣れ親しんだ空間を移動するときの記憶力、つまり空間記憶も改善していた。