キャバクラや高級クラブの水商売が成立する仕組み
性的なサービスを伴わない水商売の店でもその傾向はあり、特に高級クラブや大手キャバクラなどは性風俗店と比べて、特に入店時にマナーや規則の説明などしないにもかかわらず、「狭苦しい店内に美しい女性たちがいっぱいいて、みんなが煽ててチヤホヤしてくれるが決して本気にしてはいけない、色恋を売りつけられることもあるが性的な期待を持ってはいけない、ヌキサービスより高い金額を払ってるのにひたすら紳士的に振る舞わなければならない、という日本独自の寸止め謎商売」における正しいビヘイヴィアを、ほとんどの客が余すことなく理解している。
そこにはこれまた日本の誇る三大文化(規則より空気が支配する自粛好き/職場の上の者が下の者を飲みに連れ回す連れション傾向/国民全体が割とムッツリスケベ)が絡んでいて、禁止と明文化されていなかったとしても周囲に白い目で見られるような変わったことはしないし、クラブ遊び芸者遊びを教えてくれる先輩がいたから粋な振る舞いは伝授されるし、触れそうだけど触れない身体や抱けそうで抱けない身体に文句を言わずに高額を払う、というよく言えば神客、悪く言えばカモ客たちが支えるオミズの花道は実に眩く咲き誇ってきた。
誰もが客あしらいに長けているわけではない
ただし、お酒を飲むという場の特性や、クラブ遊び芸者遊びを教えてくれる先輩なんて最早どこにもいない時代性、なかなか客を選んでいられない夜の不景気など、さまざまなことが重なって、トラブルが起きることは当然ある。加えて、これは水商売/性風俗に共通した日本の傾向として、昼間は学生やOL、夜は蝶というよく言えば普通の女の子、悪く言えば素人が多く働いているため、そうそう誰もが客あしらいに長けているわけでも、トラブル回避術を心得ているわけでもない。
お金もらってるんだからプロフェッショナルであるべきだと言われても、ことヘルプに関しては夜の街に深く浸かった手練手管の玄人より、どこかあどけなさの残る普通の女の子の方に価値を見出していたのは客の方なので、堂々としていれば良い。仕事のできるママも良いが、プロフェッショナル感が強くはない女性にも華を添えてもらいたい、という男と、この夜に生きていくのだという気概は特にないが割の良いバイトをして綺麗に着飾りたい、という女の利害が奇跡的に一致して、今宵もオミズにあかりが灯る。