薬を飲みすぎると逆に体調が悪くなる

【鳥集】重なりやすい薬には、ほかにどんなものがありますか。

【長尾】痛み止めが重なることもよくあります。内科で「何か困っていませんか」と聞かれ、「神経痛があって困っています」と答えて痛み止めを出された人が、実は整形外科でもすでに痛み止めをもらっていて、2倍量飲んでいることも多いです。NSAIDs(エヌセイズ=非ステロイド性消炎鎮痛薬)は消化器の副作用が出やすいので、その結果、知らない間に胃潰瘍ができている人も多いですね。

それから、さまざまな薬の複合的な作用かもしれませんが、意欲がない、ボーッとしている、元気が出ないという状態が続き、認知機能が低下したという人も多いです。ある人は20種類ぐらい飲んでいて、それを少しずつ切って全部やめてもらったら、別人のようにシャキッとして元気になりました。やはり西洋薬って、元気をなくす薬が多いんです。

【鳥集】確かに、受容体をブロックして、数値を下げるという薬が多いですね。

【長尾】血圧を下げる、コレステロールを下げる、血糖を下げる……。下げる方向の薬ばかりなんです。「アゲアゲ系」は西洋薬は苦手で、漢方の「補中益気湯ほちゅうえっきとう」のような補剤(体力を補う薬)は、西洋薬には少ない。患者さんは数値を下げる薬ばかり飲んでいる。一番顕著な例では、10剤ぐらい降圧剤を飲んでいる人を見たことがあります。

【鳥集】えっ、降圧薬を10剤もですか!

10種類もの降圧薬を出されていることに気づかない

【長尾】そうです。もうびっくりしました。カルシウム拮抗きっこう薬だけでも4剤。考えられないでしょう。高血圧のすべての系統の薬が、2種類ずつくらい出ているんです。ほかにもARB、ACE、βブロッカー、利尿剤など。僕はその人を診た時に、「この人、よう生きてるな」と思った。こんなに降圧薬を飲んでいても人間は死なないのか、と逆に感心しました。

【鳥集】本当に驚きます。

【長尾】ひとりの開業医の先生が出していたんですが、患者さん本人も、降圧薬を10種類も出されているとはまったく気がついていないんです。最近はさすがに、そこまで極端な例は見なくなりましたが、昔は同じ作用の薬を何種類も飲んでいる人がたくさんいました。診察中に患者さんがもってきたお薬を広げて数えていったら、15種類、20種類になるようなケースがいっぱいあったんです。