自分の人生を本にしたい。仕事で培ったノウハウを世に伝えたい……。だが、そんなに甘くない!エッセイの達人が、人気ブロガー、さらにはプロ作家になるための4つの心得を開陳する。(>>前回の記事はこちら)
本命は「なぜ?だろうか?」型。『もしドラ』がお手本だ
「もしドラ」こと、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』が空前のヒットになっている。内容もさることながら、これはやはりタイトル勝ちというべきだろう。切り口と視点がみごとなピンホールになっているだけではない。この「もし○○が△△だったら」式のいい回しは、往年のドリフのコントの題名にもよくあるパターン。深読みをすれば、現在40代のドリフ世代をターゲットにした巧妙なネーミング作戦といえないこともない。
ではあなたがデビュー作でタイトル勝ちを狙うにはどうしたらいいか。最近の書名には、大きく分けてだいたい3つほどのパターンがある。
1つ目は「なぜ? だろうか?」型で、先の「もしドラ」もこれに当たる。
なお、その先駆けといえるのが、数年前にヒットした『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』だった。クイズ形式のタイトルといってもいい。「言われてみれば確かにそうだ、なぜだろう」という読者の反応を引き出しておいて、「ハイ、答えは本の中で」。これも商売上手である。
この本がヒットするまでの著者は、一般には無名の公認会計士だったといっていい。それが「さおだけ屋」というピンホールから会計学・経済学のメカニズムをやさしく説いたこの1冊で、一気に有名人に。これから本を書こうという人にはいい参考になるのではないか。
また、このヒット以降、これを真似た『若者はなぜ3年で辞めるのか?』などのタイトルが続出。このパターンは新書を中心に現在も続いている。
2つ目は、村上春樹のメガヒット『1Q84』に見られる、「え、なんだそれ」型である。少し知識や教養のある人なら、ジョージ・オーウェルの『1984』との関連についても当然思いを巡らすことになるだろう。
「だが、9がQになっているのは?」このあたりの謎めいた部分と、字面と音がもたらす一種の「ノイズ感」。それが読者を刺激して、驚異の売れ行きにつながったのかもしれない。
3つ目は「ちょい見せ」型。これは実用書系などに昔からあるオーソドックスなスタイルで、今なら、『グーグル秘録』『Twitter革命』などがこれにあたる。そのときどきの新語や流行現象を思わせぶりにタイトルにとりこみ、それをちらちらと見せながら、「知らないと恥をかきますよ」と読者に訴えかける。なお、類似のネーミングには『今さら聞けない◯◯◯』『猿でも分かる○○○』などがあって、こちらも定番である。
ピンホールでいくしかないアマ文筆家にとっては、やはり「なぜ? だろうか?」型が本命になる。「え、なんだそれ」型は無名の著者がやるとスベる可能性大。専門性を生かした本を書くのなら、「ちょい見せ」型もいいのではないか。
最後に「べからず」集を。プロはめったにつけないのに、アマ文筆家が平気でつけがちなのが「情緒たっぷり」型のタイトル。これは『追憶』『過ぎ去りし日々』の類で、『号泣』という本を手にとって見ると、なんのことはない、愛犬のシロが死んだ話だったりするのである。