「利上げが続く限り、危機はいっそう深まりかねない」

シリコンバレー銀行の破綻はFRBの超金融緩和によるテックバブルと、金融引き締めによる信用収縮の最初の犠牲者と受け止められる。同行の経営破綻に伴う信用不安から同じく取り付け破綻したシグネチャー銀行は暗号資産(仮想通貨)企業を主取引層にするという意味において、同じ緩和バブルの犠牲者といえる。

経営破綻した銀行の預金は本来、預金保険の限度額である25万ドル(約3400万円)までしか保護されないが、米金融当局は特例として破綻2行の預金を全額保護した。2行がテック、ヘルスケア、仮想通貨業者の決済性資金を担っており、多数のベンチャー企業が資金繰り倒産する懸念があったためだ。

これら一連の銀行破綻を受け、FRBは利上げを停止するのではないか、との見方が浮上していた。しかし、FRBは21、22日に開催したFOMC(連邦公開市場委員会)で0.25%の利上げを決めた。足元のインフレ率が6%と依然として高水準にあるためで、9会合連続の利上げとなる。

市場関係者は「今回の米銀2行の経営破綻はFRBによる利上げが危機の引き金であり、これまでの緩和バブルの清算といえる。その意味で、起こるべくして起こったようなものであり、利上げが続く限り、危機は去らないし、いっそう深まりかねない」と話す。

日本への影響は地方銀行から広がる

その影響が最も大きくなるのではないかとみられているのが日本の地域金融機関だ。「日本の緩和バブルの影響は大きく、解消はまさにこれから。米国と同じように日銀が利上げに転じた瞬間に、地銀等が抱える国債をはじめとする有価証券に含み損が生じるジレンマを日本経済は抱えている。植田和男日銀総裁の緩和からの出口戦略は難題だ」(市場関係者)。

すでに、欧米の金利上昇に伴い外債投資に多額の評価損が生じている地銀が少なくない。それを象徴するのがSBIグループが出資する地銀9行(島根、福島、筑邦、清水、東和、きらやか、仙台、筑波、大光)の苦境だ。

「出資9行はすべて22年9月期に有価証券運用で評価損が生じており、その総額は1000億円を超える」(同)。しかも、うち2行は含み損から配当原資がマイナスに転じている。大半は米国債での評価損だが、さらに、今後、日本国債についても金利上昇懸念が高く、国内外債券で巨額な含み損に陥りかねない。

こうした有価証券投資の損失顕在化から地銀再編が促進されるのではないかとの見方も浮上している。金融庁は各県で「第一地銀と第二地銀を統合させる」というシナリオで動いている。そのシナリオの原点は2018年に金融庁の有識者会議がまとめたレポート「地域金融の課題と競争のあり方」に集約されている。