ブランド力を持ちすぎてしまった「ミス慶應」

大学はこうした状況をかなり気にしていた。当時、こんな告知を出している。

「『ミス慶應』等を標榜するコンテストについて:近年、学外において、『ミス慶應』あるいはそれに類する名称を掲げたコンテストが開催されていますが、それらを運営する団体は本学の公認学生団体ではなく、コンテスト自体も慶應義塾とは一切関わりがありません。

しかしながら、それらのコンテストには本学の学生も参加しており、一部報道に見られるようなトラブルも発生しています。本学はこうした事態を深く憂慮しており、状況によって今後の対応を検討していきたいと考えます。

塾生諸君へ
この件に限らず、塾生諸君には、さまざまなトラブルに巻き込まれることのないよう十分に注意するよう望みます。何か困ったことがあれば、所属キャンパス学生生活担当窓口に遠慮なく相談してください」(慶應義塾大学ウェブサイト2019年9月30日)

大学としては、これまでミスコンを「一切関わりがありません」という立場から、無視していた。しかし、慶應のミスコンはブランド力を持ちすぎてしまった。大学教育や研究の中身よりも、大学があずかり知らぬ課外イベントのほうが社会的に注目される。おまけに週刊誌、ネットでネタになるような騒ぎを引き起こしてしまう。そのたびに大学へ問い合わせがくる。でも、対応のしようがない。

慶應義塾大はミスコンを無視したいところだが、そうもいかなくなったというのが、この告知から伝わってくる。「憂慮」という言い方には、「トラブル」を防ぐというリスクマネジメントが読みとれる。不祥事を起こさないようにと警鐘を鳴らしたといっていい。

慶應義塾大学
写真=iStock.com/mizoula
※写真はイメージです

「新しい価値観」を謳っているが具体性がない

2022年に話をもどそう。慶應義塾大のもう1つのミスコン、「ミス慶應キャンパスコンテスト」はこう宣言している。

「今年度から始動しました当ミス慶應キャンパスコンテストは、2018年より開催の始まったミス慶應コンテスト及び、それ以前に慶應広告研究会により行われておりましたミス慶応コンテストとは一切関係のないコンテストであり、運営する団体も全く異なります。

当コンテストは、美の価値観が多様化する昨今において、個々人が持つ様々な美しさを表現し、その先にある夢や目標を実現するためのコンテストとして発足致しました。

従来のミスコンテストで評価されるような一様の基準に留まらない、新しい価値観を提示できるようなコンテストを目標として活動していきますので、既存のコンテストとは性質の異なるものとして皆様にはご認識頂けますと幸いです」(ミス慶應キャンパスコンテストウェブサイト)

大学ミスコンが外見主義という批判を受けていることを意識した開催趣旨だが、慶應というブランドにこだわりを持ちつつも、「新しい価値観」の具体的な中身が見えない。