映画でみせた気迫の演技

映画『今日子と修一の場合』(2013)では、家族のために保険外交員となったが枕営業を強いられ、それが明るみに出て、夫の実家から追放される女の役。

孤立無援の今日子は東京に流れ着き、ヒモのような風俗スカウトマン(和田聰宏)と懇ろになるも、東日本大震災で再び孤独になるという役。今日子は常に大切な人を「守ろう」としてきたのだが、皮肉な運命と残酷な仕打ちが待ち受けている。

また、実姉・安藤桃子が原作・監督・脚本の映画『0.5ミリ』(2014)では、流浪の介護ヘルパー・山岸サワ役。

一見「爺転がしのパラサイト後妻業」に見えるサワだが、老人たちの生活に絶妙な距離感でまんまと入り込み、完璧な家事と丁寧な介護スキルでとりこにしていく。孤独な老人の生活を立て直してあげたり、詐欺師から救ったり、かたくなな老人の心をほぐしていくのだ。自身も不遇だが、生きづらさを抱えた青年も結果的に救う。

縁はないが寂しさを抱えた人を、孤立死や老々介護崩壊から「守る」役割を果たしている。この役がとにかくすごい。サワの図太さに笑い、優しさとかいがいしさに感心し、たくましさの裏にある脆さにハッとさせられた。

前述の『追憶』では、自分を執拗しつように追いかけてきたヤクザ(渋川清彦)を殺そうとした少年たちをかばい、自ら罪を引き受ける。血縁関係のない子どもたちを「守った」わけだ。

あの有名な『万引き家族』(2018)でも、罪をすべて引き受け(罪を犯してはいるが)、疑似家族を「守る」役だった。守りっぷり、すごくないか?

2018年5月14日、第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された『万引き家族』フォトコールでポージングする安藤サクラ。
写真=ABACA PRESS/時事通信フォト
2018年5月14日、第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された『万引き家族』フォトコールでポージングする安藤サクラ。

テレビドラマ界の「守護神」へ

映画を中心に「守り」を固めてきたサクラだが、「守護神」級に昇格したのが、「ゆとりですがなにか」(日テレ・2016・2017)だ。

画像=日本テレビ「ゆとりですがなにか」 (2016年4月期 日曜ドラマ)公式サイトより
画像=日本テレビ「ゆとりですがなにか」 (2016年4月期 日曜ドラマ)公式サイトより

ゆとり世代のマイナス面を凝縮したような主人公のひとり・坂間正和(岡田将生)を叱咤しった激励して「守った」のが、サクラ演じる宮下茜だった。同期入社の坂間より度胸も能力も高く、出世街道を走る女だ。坂間の尻を叩き、尻拭いもし、公私ともに「守ってきた」わけだが、まさかの結婚退職。坂間家に入ってからは孤独を味わうも、夫を支えて守ることに徹する(この展開に忸怩たる思いはあるが)。

朝ドラ「まんぷく」(2018)でも、天才肌だが問題の多い夫(長谷川博己)を献身的に支え続けた妻の役。もう、どんだけ頼りない男がいても、サクラがついていれば安心なわけよ。

ということで、恋人や夫、家族や子ども、弱き者を長年にわたって守ってきたサクラが「ブラッシュアップライフ」では、女友達を「守りきった」。

腕力や権力や経済力、歪んだ正義感に頼らず、見返りも求めずに守ってくれる存在として、安藤サクラは「守護神」の地位を確立したといってもいい。