「兵役」に対する韓国男性たちの本音
逆差別の被害者であるとの意識は、韓国で若い男性の多くに浸透している。BBCによると、性別による差別を受けていると感じている男性の割合は、79%にも上るという。
不満の核心は、男性のみに義務づけられた兵役だ。韓国の男性は30歳を迎えるまでに、18カ月の兵役に就かなければならない。
キャリアを一時停止して社会から離れるこの兵役が、男性に不利に働く性差別になっているとの不満が絶えない。ある男性はBBCに対し、「報酬はありません。犠牲を払うだけです」とこぼす。
近年では女性の権利を訴える「#MeToo」運動が話題となったが、韓国男性たちは「Me First(私が最優先)」を叫び、対抗心を燃やしているという。
兵役への不満はもっともだが、果たして全体像を見渡したとき、男性に対する逆差別の状態と言えるかは疑問だ。BBCは韓国雇用労働省のデータを引き、男性への兵役があってなお、2020年の韓国女性の平均月給は男性の67.7%に留まると報じている。
すなわち韓国では、女性は男性の3分の2ほどしか稼げない現実が横たわる。同記事は「これは先進諸国で最大の賃金格差である」と指摘する。
女性を敵視するしかない韓国の行き詰まり
性犯罪の多発する韓国で、女性を守り続けた駐車スペースが消滅し、教育現場からは男女平等の概念が削除された。
韓国では女性をターゲットとした大規模な性犯罪事件が繰り返し明るみに出ており、そのたびに女性たちが蜂起し安全性の向上を勝ち取ってきた歴史がある。彼女たちはユン氏の就任以来、ただでさえ家父長制の色濃い韓国社会において、男性優位への回帰が加速しているとして危機感を募らせている。
女性専用区画が象徴する男女間のあつれきは、ユン政権の政策の妥当性を問う大問題へ発展したとも言えるだろう。
同じ国内でヘイトを煽る韓国政府の手法は、経済問題の現実から男性の目を逸らす意味で、皮肉にもいっときの効果を現している。しかしその実、国民が男女に分かれて足を引っ張り合い、自分たちの陣営こそが性差別の被害者だと声高に主張し合っているのが現状だ。
昨今では世界各国において、国内の生産性を高め、いかに国際的な競争力を磨くかが重要課題のひとつとなっている。翻って、同じ国民同士での罵り合いを煽る韓国政府の手法は、およそ理知的とは言い難い。仮に兵役が男性の不満を呼んでいるのであれば、そちらを改善する方がよほど建設的なアプローチであろう。
性被害に困惑する女性たちのためにも、不毛な争いに誘導され時間を無駄に費やしている男性たちのためにも、韓国政府は実りある政策を示すべき時が来ている。