ドイツ国営放送のドイチェ・ヴェレは、南部アイヒシュテットの街の駐車場で2016年に女性がレイプされたのを受け、市街地中心部の公共駐車場に女性専用区画が導入された例を報じている。
コンセプトはドイツ国外へも広がった。現在では、オーストリア、スイス、中国、そして韓国など、複数の国で採用されている。韓国では出入り口付近の数区画をピンクの枠線で囲い、女性のアイコンを描いて専用スペースとしている。
もっとも、利用者の安心を生む一方、女性用スペースは議論の対象にもなってきた。駐めやすいスポットを女性に割り当てることから、女性は運転が下手であるとの性差別を生んでいるとの指摘がある。ドイツでも一部判事が女性用スペースの不当性を指摘するなど、賛否両論が渦巻く。
「車に乗ればドアを即ロック」性犯罪の絶えない駐車場
こうした専用区画は日本ではほとんど見られないため、日本の事情をベースに考えると、必要性を理解することは難しいかもしれない。しかし、韓国では女性が暗い駐車区画を避け、少しでも入り口に近い明るく安全な場所に駐めたい切実な事情がある。
それは、女性をターゲットとした性犯罪の多発だ。
BBCは、韓国政府による統計を引き、市内の駐車場で起きた暴力犯罪の実に3件に2以上を、レイプ、性的暴行、ハラスメントなどの性犯罪が占めると報じている。さらにBBCの別記事によると、女性に対する性犯罪者のうち、10人に7人以上が刑務所行きを逃れている現実がある。
こうした事態を受けてソウルでは、女性保護策の一環として2009年、およそ5000台の駐車スペースを女性用に割り当てた。ソウル市は30台以上の規模の駐車場に対し、10%を女性に割り当てるよう義務づけている。
駐車場での性犯罪は絶えずニュースになっており、訪れる女性たちはこれを警戒している。市内に住むある女性はBBCに対し、「車に乗るといつも、即座にドアをロックしています」と証言している。この女性は、女性用区画を利用する際には「いつもより安心できます」とも語った。
韓国ではこのような駐車場の治安問題に加え、盗撮など悪質な性犯罪が多発していることも女性の不安の種となってきた。宿泊したホテルに盗撮用カメラが仕込まれている例などが多く報道されており、日本の状況とは異なる次元で、女性が警戒心を募らせる状況となっている。