標準以下の社員をどうすべきか
「最低レベルの社員を淘汰して、よい結果を出している企業がますます増えている」とフセリドは言う。基本的な期待を満たしていない社員への対し方についての彼の意見は、経営学の専門家の間で現在盛んな論争の一方の極を代表するものだ。
意見の相違の1つは、パフォーマンスを評価するときの、絶対比較、相対比較という2つの方法をめぐる混乱のためだ、とダラスのパフォーマンス・マネジメント・コンサルタントのディック・グロートは言う。
絶対比較は、あらかじめ定められた目標や期待に照らしたパフォーマンスという観点から個人を評価するものだ、とグロートは説明する。成果評価で広く用いられている方法だが、この絶対比較の問題点は明白だ。基準がかなり低く設定されていたら、ほとんどの社員が期待を上回ることができるのである。
相対比較は、他の社員と比べてどうだったか、という観点から個人を評価するものだ。多くのマネジャーに気まずい思いをさせるのはこの方法である。
「強制的ランクづけ(forced ranking)と強制的配分(forced distribution)が、相対比較を用いた2つの例だ。強制的ランクづけは、通常、社員のパフォーマンスと潜在能力の両方を判定する基準を使って、業績評価プロセスと並行しながらも、いくぶん独立して行われる」と、グロートは説明する。強制的ランクづけの典型的なスキームでは、社員の20%がAレベルの人材と判定され、70%がBレベル、10%がCレベルと判定される。すべての社員が基本的な期待を満たしていたとしても、一部の社員は最低レベルと判定され、一部の会社ではその評価に基づいて解雇されることもある。これは多くの専門家を憤慨させるやり方だ。目標を達成している社員を解雇したら、その企業の文化に対する信頼が損なわれると、これらの専門家は主張する。しかし、強制的ランクづけを用いている企業のすべてが最低ランクの社員を機械的に解雇しているわけではなく、当人に自分のランクを知らせるだけという企業もある、とグロートは言う。
一方、強制的配分システムは、年次評価プロセスだけに注目して、社員の潜在能力の評価には目を向けない。「フォーチュン500社企業のおそらく30%が、なんらかの弁別によってパフォーマンス評価の『評点インフレ』を防ぐために、この手法を用いている」と、グロートは言う。たとえば、「特に優れている」という評価は全社員の5%、「優れている」という評価は20%と決めることができる。さらに、全社員の10%が「改善が必要」と評価され、最低でも5%が「不十分」と評価されるようにも要求できるのである。