ヒルトン東京のフレンチダイニング「ル・ペルゴレーズ」でソムリエを務める朝日正勝。ヒルトン東京に就職した当初は宿泊部門を希望していた。ところが、配属されたのはヒルトン東京内にあるブラセリー「チェッカーズ」だった。飲食関係は知識も経験もゼロ。朝日は挫折感を味わった。
それだけではない。あるとき、同じヒルトン東京のフレンチダイニングのマネージャーにワインの産地や品種などについて質問された。朝日はまともに答えることができなかった。
「『知識のないものをお客様に提供するのか』と言われて、悔しかったですし、そんな自分に反省もしました。そこからヒルトン東京のグランドワインリストに載っている全てのワインを必死に調べて、頭に入れることを始めました」
朝日はすぐにワインの奥深さに魅了された。ソムリエになろうと決意し、独学で勉強を開始。1999年に資格を取得した。
ソムリエとなった朝日はチェッカーズで本格的にワインを楽しめる仕組みを導入し、その後、2003年にフレンチダイニング(「ル・ペルゴレーズ」の前身となる店)へと異動した。
「先輩のソムリエからは『ソムリエは資格を取ってからがスタートだ』と言われていましたが、異動になってようやくその意味がわかりました」
資格があっても、ダイニングでのサービスの経験がない。また、知識として持っていた料理とワインのマリアージュが本当に正しいのかを、自分の五感で確かめる必要性も感じた。朝日はその店で料理とワインに触れ、接客をしながら、ソムリエの経験をより深化させていった。
そして、2009年からはフランス国家最高職人賞を受賞したステファン・ガボリョー監修による本格フレンチダイニング「ル・ペルゴレーズ」でソムリエを務めている。
「決まりきったマリアージュではなく、お客様のご要望をお聞きしながら、その方に合ったマリアージュをご提案しています」
質の高いもてなしの下地を、叩き上げで培った「ソムリエの五感」が支えている。