ミュージアム 1999ロアラブッシュ
シェフ ソムリエ
矢内徹(やない・とおる)
42歳。栃木県出身。1994年にソムリエの資格を取得し、2001年より現在の店で勤務。

大正ロマンの香りを今に伝える東京・青山の洋館で営業しているのが、フレンチレストラン「ミュージアム 1999ロアラブッシュ」。矢内徹はソムリエを統括するシェフ ソムリエとして、グルメな人々に極上のワインを提供している。

矢内がワインと出会ったのはホテル専門学校に通っていたときだった。

「授業の中で、ソムリエの先生が『星の数ほどあるワインの中で、お客様にぴったりの1本をお勧めできたときの喜びはソムリエ冥利に尽きる』と言っていたのが心に強く残ったんです」

卒業後、シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルに就職した矢内は働きながらソムリエの勉強を重ね、25歳で日本ソムリエ協会のソムリエ資格を取得した。

「当時はメインダイニングで働いていたんですが、ソムリエの資格をとる上では机上の勉強だけでなく、先輩やときにはお客様から教えていただくことが非常に役に立ちました」

そして、2001年には「もっと幅広い層のお客様と接しながら働いてみたい」との思いから、ミュージアム 1999ロアラブッシュに職場を変えた。

このフレンチの名店のシェフ ソムリエとして、矢内が心がけていることがある。

「私は、ワインは食事の中のごく一部だと考えています。当店では、総料理長 中島寿幸による素材を生かした繊細なフレンチを味わっていただけます。ソムリエの私は料理に合った軽やかで膨らみのあるワインを中心にご提供し、建物の雰囲気も料理もワインも、すべて含めて『楽しかった』と言っていただけることを目指しています」

歴史ある洋館で過ごす非日常の時間。おしゃれをして芸術的な料理の数々に舌鼓を打つ。そのテーブルにそっと添えられたワインには、ソムリエ矢内の静かな思いが込められている。