防衛出動時の自衛隊は「普通の軍隊」
そもそも、自衛隊は警察で、軍隊ではないというのは、嘘である。
自衛隊の武装出動には、「治安出動」と「防衛出動」の2種類がある。
「治安出動」とは国内での暴動鎮圧などにおいて、警察を補完するための出動だ。この場合、自衛隊は警察力として使われるので警察と同様にポジティブリスト的統制に服する。
一方、国防上の有事に自衛隊が出動するのが「防衛出動」である。自衛隊法76条に基づき、首相が防衛出動命令を出す。
防衛出動命令が出されると、自衛隊法88条1項で「自衛隊は、わが国を防衛するため、必要な武力を行使することができる」とされており、自衛隊の武力行使が原則的に許容される。
同条2項が「前項の武力行使に際しては、国際の法規及び慣例によるべき場合にあってはこれを遵守し、かつ、事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならない」と定めている。
この「国際の法規及び慣例」とは、先に触れた「戦時国際法のネガティブリスト的制約」を指している。
要するに、自衛隊は防衛出動においては「普通の軍隊」として運用されるのだ。
日本には軍法体系が存在しない
しかし、「普通の軍隊」には、「軍法」が必要だ。
自衛隊法88条2項は「戦時国際法を守れ」と定めているが、万が一、自衛隊がそれに違反するような武力行使を行った場合、それは国内的軍法体系(交戦法規とそれを適用する軍事司法制度)によって裁かれる必要がある。
だが、この軍法体系が日本に存在しないのだ。
単に存在しないのではなく、存在できない。
憲法9条が「戦力の保持」と「交戦権」を否認している以上、「戦力=軍事力」とその行使を統制するための国内法体系を持つことができないからだ。
ここに日本の安全保障体制の根本的な欠陥がある。
(後編に続く)