「自衛隊は警察力だ」という嘘
「自衛隊は軍事力ではなく警察力だから合憲だ」とよく主張される。
その根拠にされるのが「ポジティブリスト」と「ネガティブリスト」の区別だ。
原則的に武力行使を禁じ、一定の列挙された場合に例外的に許容するのがポジティブリストによる統制である。
逆に、原則的に武力行使を許容し、一定の列挙された場合に例外的に禁じるのがネガティブリストによる統制だ。
簡単に言うと、ポジティブリストは「法律が、できるのはこれだけだとしていることのリスト」、ネガティブリストは「法律が、できないのはこれだけだとしていることのリスト」である。
武力行使に関し、警察はポジティブリストで統制され、リストにあること以外はできない。それに対し、軍隊は、ネガティブリストで統制され、リストにあることは絶対にやってはいけないが、それ以外はできる。
軍隊の交戦行動のネガティブリストを定めているのが「戦時国際法」である。
非戦闘員・民間施設に対する無差別攻撃の禁止、降伏した捕虜の殺害・虐待の禁止、中立国への攻撃の禁止などが戦時国際法によって規定されている。
これらの禁止項目に該当しない限り、武力行使は許される。
「警察同様の厳しい規制」が自衛隊の手足を縛る
自衛隊は警察と同様、ポジティブリストで統制されているから、軍隊ではないとする合憲論が存在する。
この主張は後に触れるように嘘であるが、仮に真だとしても、自衛隊は「法的な束縛が強すぎて使えない実力組織」になってしまい、日本をしっかり守ることなどできなくなる。
警察は、取り締まり対象者が暴力的・破壊的行動を実行し、武器使用しないと警官や第三者の被害を回避できないとみなされるごく限られた場合しか武器使用できない。
だが、軍事侵攻に対し自国を防衛する軍隊は、相手がこちらに気付かず通り過ぎてしまう場合でも先制攻撃をかけて撃滅できるし、そうすべきだ。
軍隊を警察と同様にポジティブリストで統制するなら、侵略軍を実効的に撃退することなどできない。だからこそ、国際法は自衛戦争を合法化すると同時に、自衛のための武力行使はネガティブリストで統制している。
「自衛隊は警察同様に規制されているから合憲」などという欺瞞に満ちた主張が、自衛隊から実効性のある防衛能力を奪ってしまう。