だから年俸が上がらない

現在も、12球団の経営者の多くは、親会社の出身者、出向者や兼任者だ。当然ながら親会社の意向を意識しながらの経営になる。

唯一、広島東洋カープは親会社の無い独立採算制ではある。またDeNAはプロ野球を自社のスポーツビジネスの中核として積極的な事業展開をしている。それ以外の10球団も親会社との関係は変化しつつあるが、基本的には親会社のグループ企業であり、親会社の支援の下で球団を存続させている。

そして「横並び」の意識も強い。NPB球団に交渉をすると担当者は必ず「よそはどうするって言っている?」と聞くのが常だった。競争原理はそれほど働いていない。

親会社は、球団には赤字などで足を引っ張ってもらいたくないが、かといって思い切った先行投資をして事業拡大するような「冒険」もしてほしいとも考えていない。

「安全運転」で昨年対比100%以上をキープしてくれれば良いと言う経営者が多い。冒頭に挙げたNPBの選手平均年俸の「微増」はそれを表している。

観客数は日本のほうが多い

コロナ前の2019年、NPBは1試合当たり3万928人の観客を動員し、MLBの2万8660人を抜いて、世界で最もお客を集めるプロ野球リーグになった。

コロナの影響が残る2022年、NPBは2万4558人、MLBは1万8651人とともに観客数を減らしたが、NPBは依然、MLBより観客動員では上だ。

公表されていないが、企業としての売り上げでは、ソフトバンクが300億円を超えたとされる。ヤンキースは600億円程度とされる。その差はざっくり2倍だ。しかし年俸格差は13倍に広がっている。

これはIT戦略、放映権、ライセンスなど「球場の外」でもビジネスで、天と地ほどの差ができているからだ。これは一球団の問題というより、NPB、MLBという「機構全体」の問題でもある。