パリやミラノなど、海外のマクドナルドで成功を収めているカフェ事業が、日本に登場した。

07年8月末に全国15カ所にオープンしたマックカフェは、キャラメルマキアート、カフェモカなどのドリンクメニューに加え、ナチュラルスープ、ジェラートとユニークなメニューが際立つ。

「若者だけでなく、子どもから、おじいちゃん、おばあちゃんを含めた家族連れまで顧客層を広げたい」(原田CEO)

原田CEOは2007年2月、「具体案はまだ言えないが、夏には不採算店舗の対応策を打ち出す」と述べていた。これをカフェ業態に転換したのがマックカフェだ。

売り上げでは驚異的な伸びを見せるマクドナルドだが、本業で稼ぐ力を示す売上高営業利益率は2.9%(2007年度6月中間期決算で連結売上高2402億円、営業利益71億円)。

一般に卸売業なら2~2.5%、製造・小売業では5~6%が平均値だ。ちなみにスターバックスコーヒーの売上高営業利益率は6.3%(07年度3月期)。マクドナルドが最高益を出した1999年12月期は9.3%である。比較すると、マクドナルドの現状の利益率の低さが際立つ。

マックカフェは、ブラウンカプチーノ260~280円、かぼちゃのポタージュ390円、クロワッサンの中に具材のつまったマックデリ290~330円など、既存店に比べ高めの価格設定(価格差は地域別・3段階)で、マクドナルドよりは高収益が期待できる。

さらに、メニューに揚げ物がないので莫大なコストがかかるフライヤーは不要、人件費等オペレーションコストも既存店より低い、となれば利益率改善策なのか。

「メディアの方によくそう言われるけれど、不採算店という、負の資産をプラスの資産に変える目的イコール利益戦略ではない。マックカフェも含めた我々のすべての活動は、客数拡大に向けてのもの」

マックカフェは「ブランドエクステンション」戦略の一環のようだ。つまり、新メニューによって新規顧客の来店を促し、リピーターの来店頻度を上げ、既存店の売り上げ、売上高利益率をさらに伸ばすものだと、原田CEOは語る。

シドニーなど海外店舗では、マックカフェを併設した既存店の売り上げが飛躍的に伸びた実例があるという。日本でも恵比寿ガーデンプレイス店はじめ、多くが既存店に併設されている。マックカフェでカプチーノを買って、マックでフィレオフィッシュを買うなどの組み合わせ買いができ、相乗効果が期待できる。

まず年内は、15店舗でスタートし、集客状況や利益面を検証して、他店への展開を判断すると、原田CEOは語る。

「客数が増えると営業利益率は一時的に減るが、客数が増え続ければ、また上向く。複数の数字を出すと、現場はみんな混乱する。スタッフにも利益は一切考えるな。客数だけ見ろと言っています」

マックカフェで客数増だけでなく、利益ももたらすのか、まさに試金石だ。

 

【McDONALD'S DATA FILE(2)】

新規事業は不採算店の救世主となるか

マクドナルド、既存店売上高と営業利益率の推移

マクドナルドの売上高営業利益率は、2002~07年で約1~3%弱で推移していて、高くはない。原田CEOは「売上高の最大化」を最重要視するが、マクドナルドの現場では「利益率の高い商品を売ってほしい」との声も多い。今回の「マックカフェ」のような高付加価値商品は、現場の救世主。利益率向上こそが次の課題だろう。

(田中靖浩=取材協力 大沢尚芳=撮影 ライヴ・アート=図版作成)