2人は自民党の愚かな世襲政治のシンボルになった
家系図を掲載したタイミングも悪かった。折しも政界では岸田文雄首相が長男翔太郎氏を31歳で首相秘書官(政務)に抜擢し、「縁故人事」「公私混同」と批判を浴びていた。
その後、翔太郎氏がフジテレビの女性記者に官邸の内部情報をリークしたという疑惑報道が続き、年明けには翔太郎氏が父親の欧米5カ国訪問に同行してパリやロンドンで公用車に乗って観光地や高級デパートを巡っていたことが週刊誌報道で発覚。世襲政治に対する世論の怒りが過熱したところで、岸信千世氏の家系図問題が後を追うように勃発したのである。
「翔太郎氏の脇が甘いのは、縁故人事への批判が高まっている最中にパリやロンドンで観光地巡りをしてしまったこと。ふつうなら『今は狙われているから揚げ足をとられないよう十分に気を付けよう』と考えるでしょう。同世代の信千世氏も同じ。世襲批判が高まっている最中に家系図を得意げに掲げてしまう。世間の目に対する感覚があまりに鈍い」(自民党議員秘書)
ふたりは1991年生まれ、慶大卒の政治名門4世。ともに31歳で「政界デビュー」を飾り、いきなりずっこけた。自民党の愚かな世襲政治のシンボルになってしまったのである。
歴代首相は、菅氏をのぞいて世襲ばかり…
小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、麻生太郎、岸田文雄。今世紀に入って首相に就任した自民党の6人のうち、菅義偉氏をのぞく5氏はいずれも世襲議員だ。
その菅氏も総務相時代、バンドマンで無職の長男を大臣秘書官に起用して総務官僚に近づかせた。長男はその後、総務省が所管する衛星放送業界に転じて総務官僚を高額接待していたことが発覚している。
自民党を巣食う縁故体質は今に始まったことではない。岸田内閣の重要閣僚である林芳正外相も、鈴木俊一財務相も、加藤勝信厚生労働相も、松本剛明総務相も、浜田靖一防衛相も、世襲である。自民党はまさに「世襲大国」といってよい。
ポスト岸田候補で一番人気の河野太郎デジタル担当相も世襲である。祖父・河野一郎氏はタカ派で知られ、1955年の自民党結党に参画。大派閥・河野派を率いて首相を目指したが67歳で急死した。
父・河野洋平氏は逆にハト派で、若くして自民党を離党して新自由クラブを結成。自民党復帰後は宏池会(現岸田派)に加わり、宮沢内閣の官房長官として慰安婦の強制性を認めて謝罪する「河野談話」を発表した。野党・自民党の総裁に就任したものの、首相になることはできなかった。