「北欧が好き」という日本人は多い。なぜなのか。2014年からブログ「週末北欧部」を続け、昨年、著書『北欧こじらせ日記 移住決定編』(世界文化社)を出したchikaさんは「20歳で初めてフィンランドを訪ね、32歳になった昨年ついに移住を実現しました。日本にない魅力も多いが、根底にある価値観は似通っている気がする」という。ノンフィクションライターの神田憲行さんが聞いた――。(後編/全2回)
人と自然との「距離感」が心地よかった
――なぜフィンランドに移住されたのでしょう。
初めてフィンランドを訪れたのは20歳のときで、そのときに「一目惚れ」しました。一番に惹かれたのがフィンランドにある「距離感」です。その距離感は2つあって、1つが自然と人の距離感、もうひとつが人と人の距離感で、それがすごく心地良かったんですよね。
まず、「自然との距離感」とは、首都のヘルシンキでも少し歩けば森があったり、湖があったり、都心と自然がシームレスにつながっていることです。「こんな町のつくりかたがあるんだ」「こんな暮らし方の選択肢があるんだ」「どちらかを選ばなくてもいいんだ」というのが自分にとって心地良かった。今までいろいろな国をバックパッカーで訪ねていたんですけれど、住みたいと思った国を日本以外に初めて発見できたのが、フィンランドでした。
もうひとつの「人との距離感」というのは、みんなが「自分が好きなものは好きでいい」という自立した人間性を持っていることです。「あなたはそれが好きなんだ。でも私はこれが好きなんだ」みたいな。尊重と無関心の間ような距離感がとても心地良く感じました。