中国の台湾進攻はあり得るのか。起きるのであればいつなのか。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のハル・ブランズ教授とタフツ大学マイケル・ベックリー准教授による共著『デンジャー・ゾーン』(訳:奥山真司、飛鳥新社)より、一部を紹介しよう――。
ミサイルと爆発
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中国の台湾への軍事攻撃は成功するのか

2020年9月、人民解放軍は台湾海峡で、この25年間で最も攻撃的な軍事力の誇示を開始した。台湾の防空識別圏への侵入は急増している。中国軍の任務部隊の中には、30機以上の戦闘機と6隻の艦艇を従えて、ほぼ一日おきに海峡を徘徊しているものもある。その多くは、台湾と中国の双方が何十年間にもわたって尊重してきた境界線である「中間線」を突破している。

これらの部隊の中には、パトロール中にフィリピンと台湾の間を航行するアメリカの空母や駆逐艦への攻撃をシミュレートする動きをしたものもある。また、中国は2020年に香港の民主化運動を鎮圧することで、台湾を平和的に説得できる時代が終わったことを示唆したのだ。

アメリカ・台湾と中国の圧倒的な差

軍事攻撃は成功するだろうか? その答えは、つい最近まで「ノー」であった。

1990年代には台湾は中国に対して地理的・技術的に有利であったため、実質的に征服不可能だった。台湾海峡は台風や高波のおかげで危険な海域で、島そのものが自然の要塞となっている。東海岸は険しい断崖絶壁、西海岸は沖合数キロに広がる干潟で、激しい潮流もある。台湾には侵略してくる軍隊が上陸できるような砂浜さえ十数カ所しかない。アメリカと台湾の戦闘機と海軍の艦隊は、中国軍を決して近寄らせない状態を維持できていたのだ。

ところがそれ以降の中国は、国防費の支出で台湾を25対1の額で圧倒するようになった。新しい軍艦、戦闘機、ミサイル、そして何千人もの兵士を運ぶことが可能な水陸両用艦などを次々と生産した。中国の兵力規模は、今や台湾の10倍である。

中国の長射程の防空システムは、台湾上空の航空機さえ撃墜できる。中国の陸上配備型ミサイルと戦闘機は、台湾の空軍と海軍を一掃し、東アジアのアメリカ軍基地を破壊できると言われている。

中国のサイバーおよび対衛星能力は、アメリカ軍の重要なセンサーや人工衛星を機能不全に陥れることで、同軍の耳と目と口をきけなくしてしまう恐れがある。中国の対艦ミサイルは、西太平洋を航行するアメリカの大型水上艦にとって、非常に危険になる。ここ25年間にわたり、人民解放軍は台湾征服のために執拗しつように準備してきた。