自衛するのをためらってしまう女性たち
普段から「身内に弁護士がいてセクハラ案件を主に扱っている」とホラを吹き、バリアを張っておくのも効果的。自分を守るためのホラは積極的に吹いていこう。
ヘルジャパンでは女性が警戒すると「自意識過剰」と責められて、いざ被害に遭うと「なぜ自衛しなかった」と責められる。「警戒するな、でも自衛はしろ」なんて無茶な話だ。そんなトンチ、一休さんでも解けないだろう。
性暴力の被害者はただでさえ自分を責めて苦しむのに、「抵抗すれば防げただろう」「あなたにも問題があったのでは」「そんな大げさに騒がなくても」と責められて、二次加害に傷つく被害者も多い。
性暴力の加害者の約8割は顔見知りで、被害者は嫌でも嫌と言えない場合が多いという。
女友達は出張先のホテルで男性上司に「部屋で仕事の打ち合わせをしよう」と言われて「警戒したら失礼かも、自意識過剰と思われるかも」と部屋に行って、性被害に遭った。多くの女性はこのように考えて、自衛するのをためらう。
念のため言っておくが、「部屋で飲もう」と言われて「いいですね、飲みましょう!」と部屋に行ったとしても、同意したのは「部屋で飲むこと」だけである。
そもそもまともな上司なら「相手は断りづらいだろう」と配慮して、部屋に誘ったりしない。誘ってくる時点で相手に問題があるのだから「疑ったら悪いな」なんて思う必要はない。その場では体調不良などを理由に断って、後から人事やコンプライアンス室に相談しよう。
証拠を残し、弁護士に相談を
ハラスメントに遭った際、人事やコンプライアンス室が頼りにならない場合は、労働組合や外部の相談窓口、弁護士に相談してみよう。
友人はセクハラ被害を労働弁護団の無料相談窓口に相談したところ、担当の弁護士さんが親身に話を聞いてアドバイスをくれたそうだ。その後「弁護士に相談したらこう言われた」と人事に話したら態度が一変して、きちんと対処するようになったという。最初から本気でやれや、という話だが「弁護士に相談した」という一言は効果大なので試してほしい。
拙著『モヤる言葉、ヤバイ人』では、弁護士の太田啓子さんに「法律の護身術」を教えてもらった。
太田さんいわく、ハラスメントに遭った際は証拠として記録を残すことが重要だという。加害者からのメールやLINEは全部保存しておき、可能であれば音声録音データなども残そう(音声録音は相手の同意がなくても証拠にできる)。自分の日記やメモ、同僚や友人への相談LINEなども証拠として使えることがあるそうだ。
レイプや強制わいせつなどの性被害に遭ってしまった場合は、ワンストップ支援センター(医師による心身の治療やカウンセリング、捜査関連の支援や法的支援などの総合的な支援を1か所で提供するために設置されている)に連絡しよう。
避難訓練が大切なように、事前に知識を得ておくことで自分を守れる。こちらの「性暴力・性犯罪に関するリンク集」にはさまざまな相談窓口が載っているのでチェックしてほしい。