意図せず他人を傷つけてしまったりすることがないよう、ジェンダー感覚をアップデートするにはどうしたらいいのか。コラムニストのアルテイシアさんは「『自分は差別なんかしない』と思っている人ほど、うっかり差別的な発言をしやすい。自分も差別するかもしれないと気をつけて、差別しないために努力することが大切だ」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、アルテイシア『自分も傷つきたくないけど、他人も傷つけたくないあなたへ』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

関係とチームワークに関する概念的な 3D レンダリング
写真=iStock.com/tostphoto
※写真はイメージです

それを聞いて笑えない人がいないか考える

差別はたいてい悪意のない人がするもの。笑わせようとか盛り上げようと思ってうっかりやらかす場合が多い。

たとえば、エイプリルフールの同性婚ネタ。有名人が同性同士で「結婚しました」とSNSに投稿して批判される現象が春の風物詩になっている。

そうした投稿を見て、同性のパートナーと結婚したくてもできない当事者はどう思うか? 性的マジョリティにとっては「エイプリルフール限定のジョーク」だけど、同性婚できない当事者は今までずっと苦しんできたし、今後も苦しみは続くのだ。それに、そんな投稿を見たら「自分はネタとして消費される存在なんだな」と感じるだろう。そういう偏見や差別が存在するから、当事者がカムアウトしづらい現実があるのだ。

「俺の声ってオカマっぽいよね(笑)」とか自虐ネタのつもりで言う人もいるが、性的マイノリティの多くは「あいつオカマっぽいよな」「ホモなんじゃないの?」などと言われて傷ついている。

これらはソジハラというハラスメントにあたる。SOGIソジとは性的指向(sexual orientation)と性自認(gender identity)であり、ソジハラとは性的指向や性自認に関する差別的言動、暴力、いじめなどを指す。

発言する側は冗談のつもりでも、オカマ・オネエ・ホモ・レズ・オナベ・ニューハーフといった言葉を聞くだけでも傷つく人がいることを忘れずにいよう。

女性がなぜエレベーターで警戒せざるをえないのか

また「エレベーターで女性に警戒されたから逆に脅かしてやった」とテレビで話した男性芸人が炎上したが、女性がなぜ全方位に警戒せざるをえないのかを想像してほしい。それは現実にエレベーターで性被害に遭う女性がいるからだ。

いまだにメディアでは痴漢ネタやセクハラネタなどを見かけるが、それを見てフラッシュバックする被害者がいることを想像してほしい。現実に性被害にあって外出できなくなる人、通学や通勤ができなくなる人、うつになる人、命を絶ってしまう人もいる。性被害に遭った後も被害者の苦しみは続くのだ。

「フェミはエロが嫌い」などと言われるが、我々はエロや下ネタを否定しているんじゃなく、「性暴力をエロや下ネタとして扱うな」と批判している。児童虐待や動物虐待はネタにしないのに、性暴力をネタにするのはなぜか? それは性暴力を軽視する文化があるからだ。いい加減、我々の世代でなくそうよ令和。