人の見た目に言及しない

最近は「ルッキズムって何ですか?」と聞かれることが増えた。ルッキズム(容姿差別、外見至上主義)とは、容姿の良い人を高く評価したり、容姿の良くない人を低く評価したりするなど、容姿によって人の価値をはかることを意味する。

スウェーデン在住の友人いわく、スウェーデンでは「人の見た目に言及しない」「人の見た目について何か思ったとしても、口に出すのはマナー違反」が子どもでも知っている常識であり、けなすのはもちろん、褒めるのも基本NGなんだとか。

「その服ステキだね」「その髪形似合ってるね」とかは積極的に言うけど、顔や体型のことは言わないし、職場で「美人ですね」とか言う人も見かけない、と友人は話していた。

「けなすのがダメなのはわかるけど、褒めるのもダメなの?」と思うかもしれないが、これはTPOの問題である。恋人同士が「綺麗きれいだよハニー」とか言うのは好きにやればいいけど、仕事の場では見た目は関係ない。

「美人は得だよな」とか言われて正当に実力を評価されないことや、「美しすぎる議員」「イケメン社長」など本業とは関係ない見た目を評価することで「実力は無いのに顔で売ってる」といった誹謗ひぼう中傷にもつながりかねない。

ただでさえ女性は「職場の花」「女性がいると華やかになる」とか言われて、お飾り扱いされてきた。昭和の求人広告には「容姿端麗な女性求む」など、ど真ん中の容姿差別が載っていたそうだ。

私の母は拒食症で亡くなったが、摂食障害になるのは圧倒的に女性が多い。それだけ「女の価値は美しさ」という呪いが強力なわけだが、性別問わずルッキズムに傷つく人は多いと思う。むしろ男性の方が「おっさんになったね」「太ったんじゃない?」とか言われて、雑に扱われる文化があるんじゃないか。女性に言ったらダメなことは男性に言ってもダメなのだ。

私自身も学生時代に体型イジリされたのがキッカケで、過食嘔吐するようになった過去がある。ルッキズムは深刻な社会問題だと認識することが大切だろう。

善意のお節介ハラスメント

と言いつつ私もルッキズムについてはガバガバだったので、反省している。また私自身は「善意のお節介ハラスメント」に注意している。関西のおばちゃんの世話焼き魂を自覚しているからだ。

たとえば、ゲイの知人男性は職場の女性陣から「彼女いないの? どんな女の子が好み? 紹介しようか?」と言われまくってうんざりしている。相手が善意の人だと「余計なお世話オブお世話やぞ」とは言えないし、適当にごまかすしかない。

そのたびに本人は「またごまかさなきゃいけないのか」と疲弊したり「ゲイだとバレたらどうしよう」と不安になったりする。世の中には多様なセクシャリティの人がいることを想像して「目の前の相手が性的マジョリティとは限らない」「相手のセクシャリティを無視した発言はしない」とべからず帖に刻もう。