必要なのはバラマキではなく旧制度の見直し
「学会」という形を取ったことについて会長の八代氏は、学者の役割に対する反省があるとしている。
日本では、立法は霞が関の省庁が事実上担ってきたことで、行政が強い権限を持って、裁量的に運用していける形になっている。学者は法解釈が主流で、立法論に重きが置かれてこなかった。八代氏は「経済学は、本来、現実の社会問題解決のための道具だ」と言う。にもかかわらず、新しい時代に合わせて経済合理的なルールに変えていく役割を学者が担ってこなかった、というわけだ。
新学会では、「具体的な生産性向上につながる規制改革の提案を最優先する」(八代氏)という。例えば、「少子化対策が今年の最重点課題だと岸田首相は言っているが、カネをばらまくだけでなく、古い制度の見直しが必要だ」(八代氏)として、制度面の改革の必要性などを早い段階で提言していく方針だという。
岸田内閣の「新しい資本主義」では、リスキリングを通じた労働移動の促進による賃上げの実現を掲げている。一方で、雇用調整助成金の特例を延長し続けて企業に余剰人員を抱えさせる政策を取り続けてきた。企業を守ることを通じて個人を守るという伝統的な日本の政策が、持続不可能になってきた今、企業ではなく個人を守るための制度や規制の改革が重要というわけだ。
新学会には、ジャーナリストや経営者、弁護士やエコノミストといった専門家などに幅広く会員として参加することを呼びかけている。