「炎上案件PVを増やしたい」という思惑
真っ先に挙げておかなければいけないのは、ネットメディアの報じ方。まず今回の件を報じた記事の見出しを挙げていこう。
「ハライチ岩井 『ぽかぽか』で『ルフィ逮捕』連呼、スタジオは大笑い…“ネタ”扱いに『人が亡くなってる』『不謹慎』と批判殺到」(WEB女性自身、7日15時11分)
「フジ『ぽかぽか』で『ルフィ逮捕』連呼の悪ノリに不快感、時事ネタ“完無視”する『ラヴィット!』との差」(週刊女性PRIME、8日13時32分)
「『ぽかぽか』ハライチ岩井の“ルフィ逮捕”茶化しに批判殺到…フジテレビは「配慮に欠ける点があった」(WEB女性自身、8日14時47分)
「ハライチ岩井 フジで『ルフィ逮捕!』絶叫の間の悪さ ワンピース絶賛放送中」(東スポWEB、9日5時16分)
「『ぽかぽか』内の“ルフィ茶化し”が大炎上…浮き彫りになった“ニュース全スルー”の『ラヴィット』との差」(WEB女性自身、9日11時00分)
「フジ『ぽかぽか』平穏スタート 前日“ルフィ”茶化して炎上…紀藤弁護士は疑問視」(東スポWEB、9日12時26分)
「有吉弘行『ルフィと言わないで』と警鐘…際立つ“逮捕いじり”で大炎上ハライチ・岩井との差」(WEB女性自身、9日16時21分)
「『“ルフィ”逮捕』テロップ、茶化すハライチ岩井をアップに…『ぽかぽか』大炎上でフジテレビの“演出”にも批判噴出」(WEB女性自身、9日19時27分)
注目すべきは媒体名。「WEB女性自身」「週刊女性PRIME」「東スポWEB」の3つに絞られ、なかでも「WEB女性自身」はわずか2日あまりで5本もの批判記事を量産している。
その狙いは「炎上案件を作って批判の声を集めることで、ページビューを増やしたいから」にほかならず、これは週刊誌やタブロイド系ネット媒体の常套手段。
しかも今回は「WEB女性自身」の記事がYahoo!トピックスに選ばれたことで、ページビュー狙いの批判前提記事が拡散されてしまい、「批判殺到」「大炎上」のイメージが一気に広がった。
1月にスタートしたばかりでファンが少ない上に、ミスやアクシデントの起きやすい生放送であり、「腐り芸」「毒舌」が武器の岩井がMCのセンターを務める「ぽかぽか」は、週刊誌やタブロイド系ネット媒体にとって、炎上案件を生み出す上で格好のターゲット。
「WEB女性自身」の記事を見て批判の声を上げる人々は間違っていないが、「炎上案件を作りたい週刊誌やタブロイド系の媒体に釣られた」とみるのが自然だろう。
ちなみに上記以外では、「岩井勇気『ルフィ逮捕されました』神田愛花『詳しい情報が入り次第』フジ『ぽかぽか』で緊急速報」(日刊スポーツ、7日15時15分)などの事実を書いたものが数本あったのみで、番組や岩井を批判するような切り口はほぼなかった。
ただし、この記事も冷静に報じているように見せているが実際は、「『ぽかぽか』、岩井、神田の名前を使ってページビューを稼ごう」というコタツ記事に過ぎない。週刊誌やタブロイド系の媒体ほど押しは強くないが、「炎上案件候補を探して速報している」というニュアンスは似ている。
テレビ業界の軽すぎるムード
もちろん、「炎上案件を作ってページビューを増やしたいネット媒体だけに問題がある」というわけではない。
まず問題視されているのは、フジテレビが「速報“ルフィ”逮捕」という大げさなテロップを表示したこと。なぜ事件内容や容疑者の名前ではなく、「“ルフィ”逮捕」でなければいけなかったのか。すでに容疑者たちの名前は報じられているため、わざわざ「ルフィ」と呼ぶ必要性はなく、それ以前に「ルフィ」と呼ばれる人物が誰なのか確定していないため、混乱を招くテロップだった。
しかし、フジテレビだけを責めるのもおかしいだろう。テレビに限らず大半のメディアが「ルフィ」と報じ続けていたし、わざわざ漫画『ONE PIECE』を引き合いに出して耳目を集めようとするケースが少なくなかった。
テレビは視聴率、新聞は部数、ネットメディアはページビューを得るために『ONE PIECE』を思い起こさせる「ルフィ」を連呼し、事件のショーアップ化をイメージしていたのは間違いないだろう。
なかでも目に余るのが民放各局の情報番組であり、早朝から深夜まで「ルフィ」を連呼している。「他局も同じだからいいだろう」「メディア全体がそうだから大丈夫だろう」。そんな軽いムードが業界内にあると言われても否定しづらいのではないか。