「ルフィ報道」そのものへの揶揄

唯一、名指しで批判を受けている岩井については、反省すべきところがある一方で、同情したくなる点が少なくない。メディアも、それを見る人々も、「岩井の立場や意図を分かった上で批判している」とは思えないからだ。

第一に岩井は「事件や逮捕」を茶化そうとしたのではなく、「『速報“ルフィ”逮捕』というテロップに反応した」という感がある。

テロップは画面上部に表示される「FNSニュース速報」のそれではなく、画面下部に大きな文字で赤色を交えた特別仕様だった。あえて“ルフィ”とカッコをつけて強調したことも含め、岩井が「このテロップはバラエティー仕様だ」とみなして笑いを取りに行くのも不思議ではない。だからこそ岩井は芸人として最速かつ最大の反応をしたのではないか。

さらにもう1つ考慮すべきは、岩井が漫画やアニメ好きであること。あの発言は事件を茶化すためではなく、『ONE PIECE』をイジるようなテロップや、これまでの「ルフィ報道」そのものを揶揄やゆしているように見えた。

もともと岩井はハライチでネタを作っているほか、エッセイ集がベストセラーになり、漫画やゲームの原作も手がけるなどの多才さで知られている。彼ほど頭の切れる芸人なら、「『ルフィ逮捕』って何だよ」というスタッフへの不満があっても、「悪ノリで事件を茶化すようなことはしない」と感じさせた。

ただ、もし岩井にそんな真意があったとしても、「視聴者に伝わったか」と言えば疑問符がつく。番組を見ていない人も含め、「凶悪な事件を茶化すな」と批判されてもおかしくない姿だったのは確かだ。その点で岩井は直接的な謝罪はなくても、それなりに反省しているのかもしれない。

「ラヴィット!」との比較は見当違い

あらためて前述した記事を振り返ると、平日朝の帯番組「ラヴィット!」と比べて貶める記事が2本もあったが、これも批判を集めて炎上を狙うための強引さを感じさせた。

そもそも「ラヴィット!」と「ぽかぽか」は番組のカラーがかなり違う。「ラヴィット!」はMC・川島明の穏やかなキャラクターをベースにした牧歌的なムードの番組で、朝だからこそのさわやかさを求められている。

一方の「ぽかぽか」はMC3人の“センター”を務める岩井勇気の「腐り芸」「毒舌」を前面に出すなど、目指すは「攻めた番組」。事実、「ラヴィット!」よりスタジオで生放送されるコーナーが多く臨場感にこだわっている。

放送時間帯もカラーもまったく異なるだけに、「ニュースを扱う、扱わない」という点でも同じである必要性はない。むしろ別路線を目指すのがクリエイターとしての自然な姿だろう。