「回転寿司」の脆弱性が露呈した

回転寿司が「客の性善説」に依拠する側面が大きいビジネスモデルだったことは否定しがたい。レーンを回っている寿司をみだりに触ったりしない、皿ごとに料金が決まっているのであればその皿をすり替えたりしない、共用の醤油さしや茶葉にいたずらをしないなど、それらが客によって守られていることを前提としてサービスが提供されていた。

回転寿司店でレーンを回っている寿司
写真=iStock.com/kuremo
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しかしいまネット上で拡散する迷惑動画は、回転寿司店のビジネスの前提となっていた「客の性善説」を根本から否定してしまうものだ。これによって店側が失ってしまった安心感や信頼感は甚大だ。損失は経済的なものでは測り切れないものがあるだろう。

被害にあったスシローは事件がメディアで大きく報じられた直後から株価が急落し、一時には170億円近い時価総額の損失があったという。これを受けてネット上ではますます厳しい論調となり「加害者には億単位の賠償を求めるべき」「見せしめとして人生を棒に振るくらいの制裁を与えるべき」といった声も大きくなっている。

彼のしでかしたことは腹立たしい悪行であることは間違いないだろう。とはいえ、その制裁はいくらなんでも厳しすぎる。彼が不届き者であることには異論の余地はないが、感情論を抜きにしていえばやらかしたこと自体は微罪である。一生償いきれない悪行であるかのように大騒ぎし、自主退学など生ぬるい、家族もろとも徹底的に追い込まれるべき――など、さながら「人民裁判」よろしく盛り上がるSNSは異様な雰囲気に包まれている。

スシローの運営会社は2月10日、「既に発覚している一連の事象に関係する方々への直接的な危害となるような言動はお控えていただくよう伏してお願い申し上げます」とコメント