一方で、女性が活躍するための「ステップ」となりうるなら評価できると海老原は続ける。

「男性が女性を教える文化はまだ整っていないので、女性の先輩に教えてもらったほうがいい。例えば営業で最後に受注するときにどうするか、お客を怒らせたときにはどうするか……。ホワイトカラーの仕事はマニュアルでは伝えられないことばかりです。だから四六時中一緒にいて伝授する形でないと身につかない。そうすると、異性に教えるのは非常に難しくなるのです。連れ回せないし、どつけないから」

女性は女性の中で各業務を覚え、リーダーも経験するほうが効率的だという意見だ。確かに、プレジデントの調査でも、男性管理職の7割が女性には仕事を教えにくいと回答している。

「業務もマネジメントも覚えて出世した女性には、今度は男女比率半々ぐらいの部署を経験させる。さらに、男性が圧倒的多数の場所にも行く。そして、新たな階層に上るときは、女性だけの部署に戻ってまた腕を鍛える。養成所としては女性だけの職場もいいと思います」

最終的に男女混合の職場で働くならば、女性だけの組織をつくることは遠回りではないのか。海老原は、世界有数の女性活用後進国である日本の企業風土でいきなり男性と並べて競争させると、男性と変わらない「スーパーウーマン」がごく少数生まれるだけに終わると反論する。

「スーパーウーマンは『私たちみたいになれない女が悪い。あなたたちも家庭を捨てなさい』と同性差別をしがちです。それでは女性活用の裾野は広がらない。バイタリティがあって後輩指導も上手な肉食ウーマンを増やすには、女性だけの部隊をつくるのもいいと思うのです」

ただし、海老原は女性チームのメンバーは、将来を見越して社内で「横連携」をとるべきだとアドバイスする。それは女性が集められがちな内勤部隊「6R」と共通の課題だという。

「例えば、人事部だけしか経験がない女性。営業現場にコネがないので、新しい制度を設計するときに営業の人に根回しできず、ローテーションで営業を経験して向こうに人脈もある男性総合職に後れをとってしまいます。そういう意味で、女性チームの人もちゃんと横連携をとって、視野を広げておいたほうがいい」

「女性のために用意された部署」に閉じこもらないように、そしてそこでキャリアが終わることのないように気をつけなければいけないのだ。

(文中敬称略)

リクルートワークス研究所 所長
大久保幸夫

1961年生まれ。一橋大学経済学部卒。99年同研究所を設立。2010年より内閣府参与を兼任。専門は人材マネジメント、労働政策、キャリア論。
雇用ジャーナリスト
海老原嗣生

1964年生まれ。リクルートグループで20年以上、現場を見てきた雇用のプロ。じっくり物事の本質に迫り、解を出すことを信条にしている。
ノンストレス 社長
坂野尚子

国際基督教大学卒。フジテレビアナウンサー、NY特派員を経て、コロンビア大学MBA取得。1996年、ザ・クイック(現ノンストレス)設立。
(鶴田孝介、的野弘路、永井 浩、高橋聖人、澁谷高晴=撮影)
【関連記事】
女性でも実力で社長になる!
成功する女性キャリア、落ちる女性の働き方
「働くママ率32%」働きやすい風土とは -富士ゼロックス
育休取得100%、女性幹部5倍!ダイバーシティ企業は、いま
ピルプワーク―枯渇する「2・8月」の売り上げを伸ばす