知識とスキルの「内容」のバランスが重要

マーケティング知識・スキルのレベルのばらつきの視点から、3つの症状を解説しました。ここからは2つ目の発見である「マーケティングの知識・スキルの『内容』の偏りがあると成果が出ない」症状について説明していきます。

図表5は、マーケティングの知識・スキルを4種に分類し、それぞれのスキルの偏在パターンの症状を説明したものです。

4 種の要素と偏在の問題症状
出典=『マーケティング思考』(翔泳社)より

マーケティングの知識・スキルの4種に含まれる要素

マーケティングの知識・スキルに含まれる要素は以下の4つです。

・戦略力:収益構造の把握、顧客理解、顧客価値、PDCAサイクル
・施策力:商品・サービス、顧客獲得・広報PR、関係継続、販売
・AI・DX力:業務効率化DX、顧客体験向上DX、システム・データ活用、AI活用
・チーム力:組織設計・連携、採用・育成、外部パートナー活用、リスク管理

これらの要素も日々の検討で改善・変更されている状況で、かつ話が細かくなりすぎるため要素の説明は割愛しますが、4種の知識・スキルの間に偏りがあると成果が出にくく、次のような問題症状が顕在化します。知識・スキルはバランスよく高めないと、成果が出にくいということです。

1.戦略偏重・実装力不足症

戦略力だけが高く、他が弱いと、いわゆる頭でっかちで施策の実装展開力が弱く成果が出ません。学習経験は豊富だけれどビジネスの実践経験が少ないメンバーが集まると起こりやすい症状です。戦略で立てたことを、施策としてしっかり落とし込む、施策の試行錯誤を繰り返す手数を出せる能力の強化が有効です。

2.施策過多・近視眼症

施策力だけが高く、戦略力など他が弱いと、施策の手数が多くてもすぐに成果が行き詰まったり、施策の手応えを感じても収益インパクトが出ずに疲弊しやすくなります。短期的に数字をつくる馬力だけがある、営業志向が強いメンバーが集まると起こりやすい症状です。

成果が乏しくなってきた場合、異なる顧客理解を丁寧に深掘りし、これまでと異なる顧客層と顧客価値を組み合わせたコミュニケーション施策を開発し、新しい顧客層を獲得する能力を強化する。そして新規顧客獲得だけでなく既存顧客の継続率を高めることで売上をつくるような、目的に対して実現するアプローチの視野を拡げられる戦略力を強化することが有効です。