最新の方法論やツールに飛びつく前に

最後に強調しておきたいのは、「最新」ではなく「最適」に目を向けて欲しいということです。皆さんもよくご存じだと思いますが、マーケティング領域はとかくバズワードが生まれがちで、最新のツールも次々と登場します。他社がそれらを導入したと聞けば、自社が後れを取ってしまう気にもなります。

山口義宏『マーケティング思考』(翔泳社)
山口義宏『マーケティング思考』(翔泳社)

ですが、前述のように戦略も戦術もあくまで自社にフィットしているかどうかが大事です。なので、最新に飛びつきたいところをぐっとこらえて、最適を模索していくことを意識していただきたいのです。もちろん最新で成果が出ることもたくさんあり、最新の追求が悪いわけではありません。

むしろ模索すべきテーマのひとつですが、何かの施策やツールを選ぶとき、最新だからと選ぶのではなく、最適なものがたまたま最新のものだった……という状態であるべきです。

これは支援会社の立場でいえば、自社のマーケティングソリューションを提案先企業にとって「最適」と呼べる価値に磨き込む、もしくは自社のソリューションにフィットした「最適」な顧客層にフォーカスしてビジネスを拡大していく重要性を意味しています。

何をしないかを見極める

自社のチームが「最新かどうか」に踊らされず、しっかりと「最適」を軸に戦略と施策の判断・実行をできる目線を養うには、やはり断片的ではない知識が必要なのです。これをさらに分解すると、幅広く俯瞰した現場の手法論を知っていることも大事ですが、同時に、そもそも「何を今しないべきか」の選球眼を養うこともとても重要です。

たいていのマーケティング手法は、やったほうがいいことばかりです。ですが、やれば成果が期待できそうなことを片っ端から試していけば、それこそテレビCMを筆頭に、無限のお金とリソースがかかります。

「この最新の手法なら成功します」と、数多くの支援会社に事業会社が取り囲まれ訴求されるなかで重要なのは、やらないことを決める、優先順位のつけ方です。この判断力をつけるには、幅広い領域に目を向けて包括的な知識を得ていく必要があります。