転社はいいけど転職をしてはダメ

自分の名刺をつくるに当たって、重大なヒントを差し上げましょう。

それは「自分の職業とは何か?」についてしっかり考えることです。

田中靖浩『ただの人にならない「定年の壁」のこわしかた』(マガジンハウス新書)
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「そんな当たり前のこと?」と思わないでください。ほとんどの日本人は自分の職業について真剣に考えたことがありません。なぜならほとんどの人は「会社員」あるいは「公務員」のことを自分の職業だと思っているからです。

よく氏名・住所に併せて書かされる「職業」欄の会社員・公務員にマルを付けるうち、それが自分の職業だと思ってしまうのでしょう。

「○○会社の会社員」「△△市役所の公務員」それは所属・勤め先にすぎません。職業とは「どんな仕事をしているか/何を目指して働いているか」の内容です。

会社が変わることを転職といいますが、これもおかしな言葉です。会社を移るのは「転社」であって「転職」ではありません。転職とは「職業を転ずること」、つまり仕事を変えることです。

自分の職業を磨くために「転社」するのは問題ありませんが、職業をコロコロ変える「転職」はよくありません。勤める会社を何社か変わったとしても「変わらない自分の仕事や信念」、それこそが己の職業です。

「自分の職業」を所属・肩書き・資格にあてはめない

フリーランスを目指すなら、サラリーマンのうちから「自分の職業」についてしっかり説明できるよう準備しましょう。これは「営業・経理・マーケティング」のような枠組みでは甘すぎます。その枠組みを通じてどんな仕事をしているのか、何を達成しようとしているのか、それをしっかりと考えましょう。そこまで突き詰めて考えた末に、自分の言葉で表現されたものが「自分の職業」です。

これは資格でも同様です。税理士、ファイナンシャルプランナー、中小企業診断士、それらは名称にすぎません。その資格を通じて自分はどんな仕事をしているのか、何を顧客に提供したいのか、ライバルとのちがいはどこか、それらをしっかり言語化してみましょう。

50代になったら、「自分の職業」を「所属・肩書き・資格」とは別に考えておくべきです。それを名刺に書き、相手に簡潔明瞭に説明することで、はじめて相手はあなたのことを理解できます。

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