東電の乱脈経営露出が止まらない。9月6日、東電の資産評価と経費を調査中の経営・財務調査委員会は、東電が1998年以降、総括原価方式で電気料金に反映させる想定コストを実際より高く設定していた“犯歴”を暴露した。
これに反発するかのように、翌7日、原発推進の旗手・読売新聞が、「エネルギー政策 展望なき『脱原発』と決別を」との社説を掲載した。経産官僚や電力会社の期待を背にした推進派の狼煙である。
脱原発世論が国民的な広がりを見せる一方、国内外ではこうした推進派の巻き返しが進行中だ。それに呼応するかのように、経産省や東電周辺では最近、奇妙な出来事が続発している。
まず、鉢呂吉雄前経産大臣が「放射能つけちゃうぞ」発言を「死の街」発言と抱き合わせで報じられ、辞任させられた。今後のエネルギー政策を左右する「総合資源エネルギー調査会」の素案が準備されていた時期である。鉢呂前大臣は辞任後、長谷川幸洋・中日新聞論説副主幹のインタビューで、経産省が準備した同調査会委員の人選がほとんど推進派ばかりだったことに不公平を感じ、反対派の増員で均衡を図る案を経産省に提示していたことを明かしている。
経産省内でも人事を巡る異様な“事件”が勃発する。改革派官僚・古賀茂明氏は9月14日、新任の枝野経産大臣に「仕事を与えられなければ退職する」旨のメールを送信。翌15日、立岡恒良官房長に「大臣は辞めてもらってもよいと言っている」と伝えられ、押し寄せるメディアに辞職を発表。ところが、16日に枝野大臣が「そんなことは言っていない」と官房長の伝言を否定すると、即座に辞職を撤回した。経産省の狡猾さが露呈したのか、あるいはそれを見越した一枚上手の知恵が動いていたのか。
古賀氏のメールが送られた同日、朝日新聞は一面トップで「東電『値上げ3年間』 賞与半減終了も同時」と報じた。だが、大事故・過失・不作為・不手際・不祥事が露呈し、しかも国庫支援まで頼るという欠陥経営が公知となった現状では、料金を値上げすれば国民の猛反発が湧き上がる。そもそも、値上げは経産省認可を要する。それには触れず、既定の方向であるかのように報じる大新聞とは何か? 原発の是非を巡って、既存メディアもその存在意義を問われている。