ボディガードは拳銃を持たずに「丸腰で楯になる」
ボディガードが拳銃を隠し持っていたとする。それが警察のボディチェックで見つかれば、同行していた親分も共犯で逮捕されてしまう。だから昭和の時代とは違い、ヤクザのボディガードは丸腰で親分の楯となるしかない。
触った程度、一時的に隠し持っていた程度ならともかく、拳銃に縁がないまま終わるヤクザのほうが圧倒的に多いはずだ。それに、拳銃という道具を使わずとも仕事はできる。威嚇にせよ殺人にせよ、銃器を使えば刑が余計に重くなってしまう。
「それでも道具を使うのは……プロの矜持ってやつだな。我々は格闘家ではない。ヤクザなのに道端で殴り合いなどしてられない」(広域団体幹部)
そのため拳銃の相場は、抗争事件の勃発などで乱高下する。20万円のそれが、一気に100万円、200万円になることもある。また、いったん使った拳銃は線条痕で特定されるため、原則、複数の事件には使えない。一度事件で撃てば、その拳銃は海や川などに捨てるしかない。
そのため確実に弾さえ出ればよく、ガンマニアのように、ブランドや生産国、銃器の種類に凝る必要はあまりない。トカレフやマカロフ、そのコピーが好まれたのは、殺傷能力が高く、低価格だからだ。が、安い拳銃だからといって密輸しやすいわけでもなく、暴力団の銃器担当にはありとあらゆる銃器が入荷するのだという。
手榴弾や自動小銃、RPGなども入るが、それらを使えばさらに長い懲役、場合によっては死刑になるので無用の長物だ。重火器だから高価とはならないのは、日本の裏マーケットの特殊事情といえる。
昔のように在日米軍から横流しされるケースはほぼなく、観光客を装いスーツケースに隠して日本に持ってくるわけにもいかない。前出の自衛隊出身だった組長は、輸入材木に紛れ込ませると言っていたが、「あまりいいモノや珍しい銃だと人に売らず自分のものにする」と話していた。大切に集めたそれらのコレクションは別の場所に隠してあるとも話していたので、あるいは押収されず、主が刑務所から戻るのを待っているのかもしれない。