日本企業のリストラ割増金の相場
ところで日本の今後のリストラの潜在的な火種の要因となっているのが、バブル期入社世代への対応だ。1988年から1992年にかけて入社した人たちで、社内のボリュームゾーンとされる。88年入社の社員は今年57歳になるが、4年後には60歳定年に到達する。その後は定年後再雇用となり、場合によっては70歳まで雇用しなくてはいけなくなる。
労働人口が減少していくとはいえ、全員を雇用することに躊躇する企業も少なくない。上場企業の建設関連会社の人事担当者はこう語る。
「50~60代をどうしていくのかという戦略が定まっていない企業も多い。必要な社員もいればそうでない社員もいる。定年後再雇用になると給与も減少し、モチベーションが下がるという現実もある。現在、60歳を迎えるのは毎年数百人程度だが、バブル期入社組になると一挙に2~3倍に増える。人件費の増額を抑えるために中堅社員の給与を減らさないといけなくなるし、採用も抑制することになりかねない。バブル組をどうしていくか悩んでいる企業は多いだろう」
そこで一つの解決策が50代のうちに早期退職者募集を実施し、一挙に削減する方法だ。人事担当者は「あっさりと見切りをつけた企業はすでにリストラを行っている。割増退職金をつけた希望退職者募集をかけて定年後再雇用を選ばないような形に持っていく企業もある。実はできればやりたいと思っている企業もあるだろうが、ネックとなるのが割増退職金だ」と語る。
早期退職者や希望退職者に募集する際に、通常の退職金にプラスして割増退職金と、オプションで再就職支援会社を通じた就職支援サービスを付けるのが一般的だ。
割増退職金は月給の何カ月分にするかが目安となるが、今では12~24カ月分、多いところでは36カ月分も支給する企業もある。50代の大手企業の年収は大体800万~1000万円であるが、年収1000万円の社員であれば36カ月(3年分)だと3000万円になる。
通常の退職金が2000万円だとすれば計5000万円になる。