精神科“卒業”から約5年後

グループホームが合わなかったため、その約3カ月後に有料老人ホームに移った母親は、環境が合っていたのか、だんだん“普通の人”に戻っていった。

そして2012年4月。精神科医には、「もう服薬も通院もしなくていいと思います。何かあったらまた来てください」と言われ、内科医には、「持病の甲状腺機能低下症ですが、甲状腺ホルモンの検査値がようやく正常値に落ち着き、数カ月安定しているのでもう来なくても大丈夫でしょう」と言われた。

見舞いに来た人の手を握るシニア女性
写真=iStock.com/MichikoDesign
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それから約5年後の2017年1月。

宮畑さんが74歳になった母親の施設を訪問したとき、母親の言動に、まるで2009年12月に戻ったかのような違和感を覚えた。施設長に聞いてみると、「数週間前からおかしな言動が増えた」と言う。宮畑さんは「なぜ家族に連絡してくれなかったのか」と憤慨すると、「ケアマネジャーには伝えた」と言われる。

近所に新しくできた精神科に連れていき、検査を受けると、母親は「自閉スペクトラム症とADHD」と診断。医師の説明を受けた宮畑さんは、「ADHDの多動性、衝動性、不注意については、母に思い切り当てはまる」と思い、腑に落ちる感覚を覚えた。

医師は、「うつ病や統合失調症などと誤診され、さまざまな精神薬を投与されることもある」と説明。宮畑さんがこれまでの経緯を話すと医師は、「精神薬の減薬に取り組んだのは正しい判断だったと思います」と言った。

「認知症疑い」や「社会不安障害」「うつ病」「統合失調症」と言われてきたが、宮畑さんは、ようやく母親に納得のいく病名がついたことに安堵した。