規制強化がされたバイクとヘルメットの歴史
なぜ、このような「努力義務」が課せられたのか? それは、自転車乗車時にヘルメットを着用していない場合、その致死率は、着用時に比べて約3倍高いことが分かっているからです。
「全ての自転車にヘルメットの着用を」などと言うと、戸惑う自転車ユーザーの方が大半でしょう。もちろん、ヘルメットをかぶらなくてもよいという便利さはよく理解できます。しかし、こうしたデータがある以上、本当に今の「努力義務」のままでよいのか、私は疑問を感じます。
ちなみに、ひと昔前まではバイクもノーヘルで走っていたことをご存じでしょうか。
現在は原付を含むすべての排気量のバイクにヘルメットの着用が義務づけられていますが、そこに至るまでには、段階的に道路交通法の改正が行われ、以下のように規制を厳しくしていった歴史があるのです。
1978年 一般道においても、51cc以上のバイクにヘルメット着用を義務化
1986年 原付も含めたすべてのバイク、すべての道路でヘルメット着用を義務化
こうした法改正によって、どれほどの数のライダーが命を救われたことでしょう。また、バイクと事故を起こした多くのドライバーが「死亡事故」の当事者にならずに済んだはずです。私自身もバイク乗りのひとりですが、もし今、「ノーヘルで乗ってもOKですよ」と言われても、恐ろしくて絶対に無理です。
命を守る規制が必要だ
ところが残念なことに、国は今、この手の乗り物の規制を緩める方針を打ち出しています。
たとえば昨年の3月4日に閣議決定した道路交通法の改正案では、時速20キロ以下の電動キックボードを「ほぼ自転車」扱いとし、「特定小型原動機付自転車」という新たな車両区分に分類しました。16歳未満の運転は禁止ですが、免許は不要、ヘルメットは義務ではなく、任意となる見込みです。
*電動キックボード、7月から新ルール 基準適合で免許不要 周知課題、指導徹底へ・警察庁(時事通信)
しかし、時速20キロ以下のキックボードと、そうでないキックボードをどうやって見分けるというのでしょう。また今回の「ペダル付きバイク」のような問題が起こることは必至です。
利便性やファッション性を求め、急増している「ペダル付きバイク」や「電動キックボード」、しかし、実際に違反者による深刻な事故が起こり、被害者が出ています。
事故が起こってからでは遅すぎます。取り締まりが追い付かないのであれば、「命を守る」という観点での徹底的な対策が必要です。