欧米諸国の首脳陣が列席するはずが…
「あれさ、やっぱやらないほうがよかったんじゃね? 比べるなっていうけれど、エリザベス女王の国葬を見ちゃうと……正直ショボかったじゃん」
「なんか国葬とか弔問外交とかって勝手にハードル上げられて、安倍さんも奥さんもかわいそうだよな。確かにいろいろあったけど……長く頑張ってくれた人なんだから普通に送ってやりゃよかったのにね」
9月27日の夜、そんな“しんみりとした会話”が日本中の酒場でかわされているかもしれない。マスコミ各社の世論調査で「反対6割」という逆風に晒されている安倍晋三元首相の国葬が、大方の予想通り「失敗」する見通しが高くなっているからだ。
当日は海外から約700人の参列客が訪れるというが、日本が何かと顔色をうかがう欧米諸国の首脳陣は少ない。岸田政権が国葬のメリットとして強調していた「弔問外交」とやらは、「いろいろな国の人と会って当たり障りのない会話をしました」という残念な結末になる見込みだ。
世論の関心は「国葬に賛成する人か、反対する人か」
そこに加えて、政府が掲げる「国全体で弔意を示す」という点もビミョーな感じで終わる可能性が高い。先ほども申し上げたように、「国葬反対」の声が多いところに加えて、演出家の宮本亞門氏や、幻冬舎の見城徹社長など著名人が、届いた招待状に「欠席」に丸をつけた画像などをSNSでアップしており、「安倍国葬」に参列するか否かが、それぞれの人の思想信条を表現する「踏み絵」のようになってしまっているからだ。
こうなると、国民の関心は、テレビなどの生中継でどんな著名人が参列したかにいってしまう。つまり、どの著名人が「国葬賛成」で、どの芸能人が「国葬反対」なのかという野次馬的な好奇心がメインとなって、安倍元首相への弔意がそっちのけになってしまうのだ。
安倍元首相やご家族にとっては気の毒なことこのうえないが、そこで気になるのがなぜ日本人はここまで今回の「国葬」に対して後ろ向きの印象を抱いているのかということだ。
いろいろなご意見があるだろうが、筆者は「国葬」というものに欠かすことができない「国教に基づく宗教儀式」という点がゴッソリ排除されていることが大きいと思っている。